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2022.06.28

杜人(もりびと)に会う

5月は雨が少なく、暖かい気候だった北海道。6月に入り適度な降雨と、季節が逆戻りしたかのような低温が続いてはいますが、北海道らしいといえばらしい気候に山の木々は青々と繁っています。田植えしたばかりの稲や露地の夏野菜の苗にとっては厳しい気候ではありますが、葉物野菜は順調に育ってきていて、多品目栽培の適応力の高さには可能性を感じています。

さて、6/14〜16と、ここ長沼町にある有機農家が営むメノビレッジ長沼にて、環境再生医である矢野智徳さんの「大地の再生」講座が開かれました。

「大地の再生」とは、人間の経済活動により傷んで詰まりを起こしている土地の水脈、および気脈に手入れを施すことにより、いわば大地の血管であるこれら水脈気脈を再び循環させ、大地が息を吹き返し、呼吸が蘇るように環境改善をしていく取り組みで、去年の8月、11月に引き続き3回目の長沼での開催となりました。矢野さんの活動は、現在、ドキュメンタリー映画「杜人〜環境再生医 矢野智徳の挑戦」として全国で上映されているので興味のある方は是非ご覧になってみてください。

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訥々と語られる矢野さんの言葉は、長年自然と正面から向き合ってきたからこその視点が常に含まれていて、今まで文明に囲われて自然との接点をひたすらに失ってきた人間が一体どこに拠って立つべきかを常に私たちに問いかけてきます。

動植物や虫や地形、水や風がどのような意思によって自然界の動的平衡を保つべく働きかけているのか。曰く、「イノシシが穴を掘るのはこの大地の水脈、気脈の機能を維持するのに必要な場所を掘っているのであって、自然界の生き物はみんなこのようにしてバランスを維持するべく働いている。」人間も最近までそのようにして自然と共存して暮らしてきたことが里山の風景を創り出したといいます。

自らが風のように日本全国津々浦々を吹き抜けては、僕のような人々の凝り固まった先入観に風穴を開けて、新たな視点の種を蒔き続ける矢野さんから当地で直接学べる幸運を感じていました。

人々がもし、再び自分たちの存在と自然との関係性を認識し直して、自然を対象物として捉えるのではなく、あくまでも人は他の存在と等しく自然の一部であることを受け入れられたら、きっともっとあらゆるものが調和した世界になっていくような気がしているのです。

この大地を分かち合うすべてのものに敬意を表して
ねずみのようにさりげなく、みみずのようにひたむきに
百姓、大地に今日も立つ


農と蔵たなどぅい
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玉城聡将

玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町

1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。

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