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渡辺博之 北の大地のイチゴづくり

2017.10.29

マルチング

9月初旬~下旬
北海道の気温も日を追うごとに下がり始め、日照時間も短くなり、いよいよ秋の訪れ。
8月に定植したイチゴ苗も、「株形成」と言われる最も生育に大事な期間に入ります。
そこで、この期間に重要となるマルチ張り作業についてお話ししたいと思います。

稲藁、バークチップ(樹皮を細かくチップ状にしたもの)、ポリエチレン(黒・白・銀・緑・茶色)、紙、生物分解マルチ等々…、様々な特徴・効果のあるマルチ素材があります。みるみるうちに気温が下がる北海道のこの時期、地温の上昇、保温効果、雑草制御、保水性やコスト面を考え、私は黒マルチを使用しています。

このポリエチレン素材の黒マルチ、コストこそ抑えられますが、収穫終了後に大量の産業廃棄物となってしまいます。本来なら、イチゴの収穫終了後に微生物によって分解され、土に還る、生物分解マルチを試してみたいのですが、3ヶ月、6ヶ月で分解が始まる物しかまだ開発されていないようで、これではイチゴの収穫前にマルチが分解されてしまいます。10ヶ月は持続する生物分解マルチが開発される日が待ち遠しいです。

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(この時期に重要となるマルチング)

さていよいよマルチ張り作業です。
マルチを張る時期は、地元のイチゴ農家さんによって違います。「9月中に張る」と言う方もいれば、「あまり早く張ると花芽形成がおかしくなるという噂があるので10月以降に張る」と言う方や、「年明けの雪解け以降に張る」と言う方もいます。ここまで明確な理由もなく時期が曖昧だと、自分で、イチゴハウスによってマルチ張りのタイミングを月ごとにずらし、発育にどう違いが出るかテストしてみるしかありません。苗の大きさ、雑草処理などを考えると、マルチ張りの時期は、作業性や出荷時期に大きく関わってくる問題だからです。

次にマルチ張りの作業手順です。
イチゴ苗は、定植後に根が活着して張ってくるので、できるだけ葉や株に負担をかけずにマルチを張っていきます。

今回紹介するマルチの張り方は2種類。

①畝幅+畝高の横幅があるマルチを50m畝の上に優しく引き、その後すばやく、定植した苗の場所を確認しながら1箇所ずつハサミやカッターで切り目を入れ、葉や茎を痛めないようにそっと切れ目から苗全体を出す、という豊浦町伝統の手法。この手法の場合、まだ気温が高く太陽さんがピーカン照りの時はNG、という注意点があります。黒マルチの下になった苗が焼けて痛んでしまうからです。

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(こちらは伝統的な張り方)

②畝の左右の傾斜幅のマルチ2本、畝上の苗条幅の1本、計3本のマルチを使います。そのマルチを、イチゴ苗の真ん中(2条植えした苗の条間)と左右に50m引き、引いた後、イチゴ苗の株と株の間をホチキスで留めていく手法。この手法の利点は、苗に負担をかけず、一人でも作業ができ、収穫後のはぎ取り作業も楽に早くできる事です。

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(3本のマルチをホチキス留めする張り方)

今回は両方の張り方を試してみました。
こうして黒マルチをかけられたイチゴ苗達。

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次の作業は、エゾ鹿対策や、ハウス内に2重、3重にビニールトンネルをかけるための準備作業のほか、広葉樹の葉が落ちる山へ入り、森のお裾分け「天然腐葉土」集めとなります。
雪が積もる前にやらなければいけない作業は、まだまだ盛りだくさん。冬の訪れを知らせる雪虫がフワフワ舞い、吐く息が白くなり始め、気持ちだけが焦る今日この頃です。

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渡辺博之

渡辺博之(わたなべひろゆき)
北海道 豊浦町

1968年 北海道生まれ。映像ディレクターとして活躍していた40歳の時、学生時代からの念願だった世界一周の旅に出る。そこで出会った、ペルーの芋農家さんの暮らしに衝撃を受け、農家になることを決意。帰郷後、地元でイチゴを新たな特産物にしようとする取り組みに共鳴し、有機でイチゴを栽培することを決意。誰にも継承せず引退を考えていたイチゴ農家さんと出会い、研修を受ける。その方の農場をそのまま引き継ぐ形で2016年に新規就農。

写真家の眼 渡辺博之

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