2017.10.04
水やり、灌水設置、雑草取り
8月中旬~下旬
日暮れより肌寒くはなってきましたが、まだまだ残暑厳しい北海道。
前回のコラムで紹介したイチゴ苗の定植が無事終わり、植えた苗の根が活着するまでの約2週間、畝表面の土の乾き具合を確認し、午前中にホースで散水をします。
この時に注意したいのが、「水をできるだけ節約したい」「早く水まき作業を終わらせ次の作業に移りたい」という理由で、つい根本に直接水をかけてしまいがちになることです。
これでは、せっかく定植時に根本に土寄せした土が回りに流れてしまい、根が露出し、その部分が太陽に当たると黒茶に変色していき、本来の根の働きが悪くなってしまいます。
よく昔の親方(師匠)から、「それでは苗が風邪引いてしまうよ、人と一緒、肌寒い時には首にマフラー巻くでしょ!?」この言葉をいつも思い出します。
水まき、特に苗の活着時には霧雨、朝露のようなできるだけ優しい霧散水になるよう、ホースを斜め上に向け、焦らず畝全体が湿るように散水してあげます。
昔、この作業が午前中いっぱいかかるので、「もっと効率の良い方法は無いのか!?」と思考し、苗を植えてすぐに灌水チューブによる水やりをした事がありましたが、やはりこのやり方では、早々に土中に水の通り道ができてしまい、根の回りにうまく水が行き渡らず、初期生育にばらつきが生まれるという問題が出た事がありました。
なので、苗を植えたてのこの時期と、栽培ハウスの棟数がまだ少ないうちは、やはり焦らずじっくりホースによる手灌水が望ましいと思います。
(散水風景)
定植後2週間ほど、午前中に水やりを続ける合間に、各ハウスに灌水設備の設置を行います。
9月に入ると、定植した畝の保温の為、マルチ張りをおこないます。
畝をマルチで覆うとホース散水ができなくなるので、マルチを張る前に灌水チューブを畝に這わせておきます。
(畝上に這わせた灌水チューブ)
配管設備などと難しく考える方もいると思いますが、そんな難しい事ではなく、専門的な知識もいりません。「灌水量」と「時間」さえ把握していれば、初めての方や女性にも設置できる水設備です。
あとは、マルチ張りをするまでの間は、ひたすら雑草との戦いです。少し気を抜いたり畑を空けたりしたら、数日であっという間に一面緑の畝となり、どこにイチゴ苗が植えてあるか分からなくなるほどです。しかし、この時期この作業を何回も繰り返す事によって年々雑草が少なくなり、雑草の発生も落ち着いてくるというものです。
雑草が増えすぎて大きくなると、イチゴ苗に日が当たらなくなり光合成に支障が出ると共に、これまでの育土により土に蓄えられた栄養も雑草に持っていかれます。
この除去した雑草を日光で枯らした後、畝の中にまた鋤込むことで、除草剤や化学薬品による強い土壌消毒剤を使わない自然環境に優しい循環栽培を行うことができます。
「無心」となり、ひたすら続ける草むしり。
この作業は有機栽培における宿命と言えるでしょう。
(先日の台風で、なかなか草むしりが追いつきません…)
渡辺博之(わたなべひろゆき)
北海道 豊浦町
1968年 北海道生まれ。映像ディレクターとして活躍していた40歳の時、学生時代からの念願だった世界一周の旅に出る。そこで出会った、ペルーの芋農家さんの暮らしに衝撃を受け、農家になることを決意。帰郷後、地元でイチゴを新たな特産物にしようとする取り組みに共鳴し、有機でイチゴを栽培することを決意。誰にも継承せず引退を考えていたイチゴ農家さんと出会い、研修を受ける。その方の農場をそのまま引き継ぐ形で2016年に新規就農。
