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渡辺博之 北の大地のイチゴづくり

2017.07.27

連作障害の回避方法?

6月末~7月初旬、無事にイチゴの収穫も終わり、一息付く間もなく次期のイチゴの作付け準備を始めなくてはならない時期になりました。

次期のイチゴの定植は約50日後の8月中旬。この1ヶ月半という短い期間の中で、
(1)今期のイチゴの茎葉など残渣の片付け
(2)堆肥、有機物、有効菌を土に蒔き鋤込み
(3)畝立て、通路への籾殻ひき
(4)畝へのマルチかけ
主にこの4つの作業をしなければならず、本来なら一度緑肥でも蒔き、じっくり育土期間を設けたいところですが、時間的にそれも叶わず…。

今現在の悩みは(1)今期のイチゴ残渣の処理、ここで既に作業が滞っていることです。

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(片付け途中のイチゴ残渣)

悩みどころは、「イチゴ残渣を緑肥として畑に鋤込むか否か!?」ということです。
イチゴはバラ科の作物の中でも連作障害が起きやすい代表格。その為、昔ながらのイチゴ農家さんは定植前に必ずと言って良いほど、ビニールハウスを完全密閉し、太陽熱と合わせて土壌消毒剤を用い一定期間の土壌消毒を行います。その際、ハウスを密閉する際に人間も回避が遅れると、命が危ぶまれるほどの強烈な消毒剤を使用します。
そうする事により、病害虫と連作障害の原因となる生物の全てを壊滅し土をリセット!?するのです。しかしこれでは、益虫や土中の有効微生物まで全て死滅すると言う事にもなりますが…。

私の栽培方法は、有機栽培や自然栽培の手法を取り入れた栽培方法。時間はかかりますが、育んできた土中の微生物の多様性やバランスを生かす方法です。
そこで、「せっかく病害虫の発生無く栽培された今期の大量のイチゴの茎葉を、緑肥として土に鋤込むか!?それともまとめてハウス外に出すか!?」が悩みどころです。

通常の慣行栽培なら連作障害が怖いので外に出しますが…そこで一つの疑問が生まれます。
「なぜ野山で自生しているイチゴは、連作障害など無縁に育っているのか」です。

調べてみると、それはイチゴの子孫繁栄、ランナー(子苗)の仕組みにもヒントが有るようです。

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(イチゴのランナー)

イチゴは、親元から少し離れた自分の生育条件が整った場所にランナーを延ばして、生育地を確保する作物。そこには親元側にはない多様な養分(朽葉土)などがあります。
その特性を考え、私の畑では自然と近い環境を目指し、炭素循環と多様な生物バランスが少しでも保たれるよう、近隣の森の落ち葉や腐葉土、木材腐朽菌(木材を腐らせる菌類)も意識して入れております。そのため、土壌連作障害の原因となる菌をバランス良く制御し、土中にてイチゴ残渣の緑肥もうまく分解され、次期のイチゴの養分となってくれるのでは?という見解もあります。

さてどうしたものか…もう数年育土、炭素循環に時間をかけてからイチゴ残渣の緑肥を使用するか、リスクを覚悟で今回テストしてみるか…これは作業時間効率にも大きく関わってくる問題。7月中には決断しなければなりません。
どなたかこの事例に詳しい方がいましたら、是非お話しをお聞きしたいものです。

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渡辺博之

渡辺博之(わたなべひろゆき)
北海道 豊浦町

1968年 北海道生まれ。映像ディレクターとして活躍していた40歳の時、学生時代からの念願だった世界一周の旅に出る。そこで出会った、ペルーの芋農家さんの暮らしに衝撃を受け、農家になることを決意。帰郷後、地元でイチゴを新たな特産物にしようとする取り組みに共鳴し、有機でイチゴを栽培することを決意。誰にも継承せず引退を考えていたイチゴ農家さんと出会い、研修を受ける。その方の農場をそのまま引き継ぐ形で2016年に新規就農。

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