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渡辺博之 北の大地のイチゴづくり

2017.05.31

生きた土でイチゴ作り

北海道も雪解けの時期となり、ようやく日中の地温が上るようになってきました。

今年は耕作放棄地にイチゴのビニールハウスを3棟新設する予定があるのと、
昨年土壌障害を受けたハウス(昨年のブログ参照)の地力回復の必要性があるので、4〜5月は、育土(土作り)が作業のメインとなります。

4月1~30日、好天日に行った作業は、土壌診断と土壌改良資材の投入です。
私の畑は、新規就農で取得した際に、10年以上耕作放棄地になっていた畑や、
農薬と除草剤・化学合成肥料で生物多様性が少なく土が痩せているために土壌障害を
受けてしまった畑、などと様々です。
まずは土壌診断検査を行い、検査結果をもとに特に土が痩せている土壌障害を受けたハウスを
優先して、3種の自然資材を投入しました。その3種をご紹介します。

1、私の畑の裏山にある森の腐葉土

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(裏山で腐葉土を採取します)

春まで行ってきた、裏山での森の作業道&散策道の整備で出た腐葉土、
これを1トン袋に入れ畑へ運び、ハウス1棟に対して1,000リットル投入しました。
この森の腐葉土には、地域の気候条件で育まれた自然の生態系と、多様な微生物が含まれております。

2、ミズナラや栗の木で作られた炭粉
知り合いの林業家さんから、炭焼きの際に余りとして出たミズナラや栗の木の炭粉を安く
分けてもらい、数日間、雨ざらしにしてアルカリ性の度合いを低くしてから、
1棟に対して200リットル投入しました。この炭粉は、土壌改良剤として土中の空気循環、
保水性、排水性の活性を高め、何より微生物が増殖しやすい環境作りに有効性があるようです。

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(炭粉を投入した圃場の様子)

3、自家培養した、納豆菌・酵母菌・乳酸菌
納豆菌は、いわゆる食用の納豆を作る菌のことです。自然界に多く存在する、
バチルス菌(枯草菌)の一種である納豆菌は、作物の病原菌で一番多い糸状菌や
雑菌の増殖を抑える力があると言われています。
酵母菌は、パンやビール発酵に使われるイースト菌のことです。
これは植物の細胞分裂の促進や側芽の生長促進、老化抑制といった働きをするようです。
乳酸菌は、雑菌を抑えるのに役立ち、土壌中のミネラルを作物に吸収しやすくする作用があるようです。

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(自家培養の様子)

これら3種の菌類を透明な衣装ケースへ水と一緒に入れ、さらに菌類の餌となる黒糖蜜を少量入れます。
そしてこの衣装ケースを約35℃~40℃の温度で約一週間保ち、菌を培養します。
これを500倍に水で希釈し、土壌障害のある畑へ散布しました。

4月は、これら(腐葉土、炭粉、3種の菌類)を畑に撒いた後、耕運機で土に鋤きこむという作業をメインに行ってきました。今後、気温と地温が上る6月を目途に、緑肥を撒く予定をしております。

5月1~20日の作業でメインとなるのは、5月末のイチゴの収穫が間近という事もあり、ひたすらイチゴのお世話です。株元の雑草を取り、日に日に伸び続けるランナー(つる)取り、古く枯れかけている葉の葉かき処理。この作業を収穫までひたすら行う事になります。

後はイチゴが美味しくなるように、ひたすら好天候を祈るだけ。
5月末からのイチゴ収穫を心待ちにしております。

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(現在のイチゴハウス)

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渡辺博之

渡辺博之(わたなべひろゆき)
北海道 豊浦町

1968年 北海道生まれ。映像ディレクターとして活躍していた40歳の時、学生時代からの念願だった世界一周の旅に出る。そこで出会った、ペルーの芋農家さんの暮らしに衝撃を受け、農家になることを決意。帰郷後、地元でイチゴを新たな特産物にしようとする取り組みに共鳴し、有機でイチゴを栽培することを決意。誰にも継承せず引退を考えていたイチゴ農家さんと出会い、研修を受ける。その方の農場をそのまま引き継ぐ形で2016年に新規就農。

写真家の眼 渡辺博之

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