2017.05.31
この場をじっくり観察してみよう
みなさん、こんにちは。
春の新緑の季節も過ぎ、だんだんと日差しの強い季節がやってきました。
植物は冬の間ためていた養分でグングン成長し、
動物や昆虫もせわしない繁殖のシーズンを迎えています。
私は、自分たちの食べるお米や野菜を作り、山や樹木の手入れもしながら、
フォレストガーデンづくりに挑戦しています。
田んぼや畑も、フォレストガーデンの大切な一部です。
5月は、前半に夏野菜の定植、種まき、水稲苗の育苗を行いました。
田植えは、6月頭に行います。
5月後半は、古民家の改修、引っ越しに向けての準備、代かきなどの作業をしています。
前回のブログでは、「フォレストガーデンっていったい何?」ということを説明させて頂きました。今回は、実際フォレストガーデンを作っていくにあたり、とても大切な「観察」ということについて書いてみたいと思います。
観察とは、「観て、察する」と書きます。目で見るだけではなくて、五感で観て、感じることで、その場所の状況や雰囲気を理解することが、観察だと思っています。いったいその場所にどのような環境が存在し、それが日々どのように移り変わっているのか?これを読み解くことが、その後の行動や方針、暮らしを考えるうえで重要になってきます。
では、実際観察するといっても、何を観察するのでしょうか?
少し具体的にみていきましょう。
まず、気候帯や標高、地形、地下水脈など、その場所が属している大きな環境が考えられます。さらに、その場所で毎日、または季節ごとに移り変わる太陽の動きや高さ、日当たりの良い場所と日陰の場所、暖かい場所と涼しい場所、乾燥した場所と湿った場所、風の向き(北風、台風、強風、雨がくる方角)、水の動き、土質や土壌の状態、その場に生きる植物や動物、その場と人が関わってきた歴史などもじっくりと観察していきます。住宅地や都市部の場合、お隣さんや近隣施設などの状況にも特に注意が必要です。隣の建物の高さや大きさ、下水の流れる位置、車の騒音、人の目線など、自分の暮らしに影響を与える要素は多いので、それらがどのような環境を作っているのか観察していきます。
(我が家の母屋は、南側・北側に沢が流れる山の中腹に位置し、夏には涼しい風が沢から吹き上げる。我が家の位置する山からは、たくさんの水が湧き出ている。)
(冬には冷たい強風が北から吹き付ける。我が家は北側が100年以上たつ杉林に囲まれている為、防風効果は抜群。)
このような視点で観察をしていくと、その場にどのような環境が生まれていて、どのように変化しているかが見えてきます。これに抗うことなく、その場の状況を、人にとっても、自然にとっても健全で美しく、持続的に命を育む環境にしていく為のデザインを考えていくのですが、その第一歩が観察から始まるのです。
(既にその場にあるものは出来るだけ活かすようにする。タラの木とワラビは、貴重な春の山菜コンビ。)
フォレストガーデンの「フォレスト」=「森」という字には、「杜」という字も使います。これは私の恩師から教わったことですが、太古の昔、人々が森を開き、暮らしを始める際、この場を傷めず汚さず、大切に使っていきます、と紐で囲って神々に誓った場所が、杜と呼ばれたそうです。そんな風に、自分の暮らす土地や環境に敬意を持って観察してみると、自然がいろいろと教えてくれます。この観察はず~と続くことですので、気長に、でも注意深く気を向けていることが大切です。そうすれば、何か変化した場合、すぐ感じるようになります。みなさんも是非、この観察の視点をもって今の暮らしを見てみてください。いろいろな発見があると思いますよ。
天野圭介(あまのけいすけ)
静岡県 浜松市
1985年神奈川県生まれ。2歳の時に父が脱サラし、静岡県の山奥でペンション経営を開始。そこでの自然と一体となった暮らしを原点に、アフリカ諸国を旅した後、オーストラリアでパーマカルチャーを学ぶ。帰国後、2014年、郷里に近い浜松市にて就農、農園『ONE TREE』を始める。米や大豆をメインに栽培。2015年には、世代を超えた有機農家の連携を図るために「ラブファーマーズカンファレンス」も開催した。
