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天野圭介 お山の中のフォレストガーデン

2017.07.27

7つの畑を重ねてみると??

いや~、暑い!そして雨も降らない!もう梅雨もあけちゃいましたね~。今年の梅雨もなんというか、不思議な感じでした。局部的な大雨、そして乾燥。まさに気候変化の真っただ中です。

 最近我が家は、毎日夕方になると家族で川にお風呂に入りに行きます。上流にほとんど民家のない川の水は透き通っており、暑さが一気に吹き飛びます。こんな季節は天然のお風呂が一番。とめどない自然のエネルギーを感じます。

 さてさて、7月は我が家の一大イベント、フォレストガーデンへの引っ越しを行いました!1年がかりで進めてきた古民家の改修と新築が一段落。なんとか無事引っ越しを終えました。しかし、ここはまだ先輩の獣たちの住処。後輩はあまり大きな顔はできず、毎晩猪先輩が家の周りをウロウロ、ブヒブヒ。ここからどうやってこちらの気配を伝えていくか?ゆっくり、じわじわ感じてもらえるよう、荒っぽいことはせずに、家の周りにみんなでマーキングしてます(笑)。早く犬欲しいな。

 そんな中、今回はフォレストガーデンの仕組みについて少しお話しできればと思います。第1回目のブログで、フォレストガーデンとは何か?について少し書きましたが、今回は森の構造についてお話したいと思います。皆さん、森と聞いたとき、どのような植物が頭に浮かびますか?大きな木?小さな木?コケ?いろいろ想像は膨らむと思いますが、フォレストガーデンでは森を大きく7つに分けて考えます。

①高木 ー 樹冠(森のモコモコした頭)を形成する樹。30mにもなる木々で、樫や椎など。
 FG(フォレストガーデン)ではコナラ、クルミ、栗、山桜など。

②中・低木 ー 高木の下で、高さ5~15mほどになる木々。椿、サカキ、モミジなど。
 FGではミカン、ビワ、梅、柿、桃などの果樹を。

③灌木 ー 高さ2mほどになる木々。ニワトコなど。
 FGではヘーゼルナッツ、ブルーベリー、スグリなど。

④草本類 ー 高さ1.5mほどになる草。タケニグサ、セイタカアワダチソウなど。
 FGではハーブ類、多年草の野菜など。

⑤地衣植物 ー 地面を覆う植物たち。ユキノシタなど。
 FGではストロベリー、カボチャ、さつまいもなど。

⑥根菜 ー 根を深く伸ばす植物たち。たんぽぽ、ギシギシなど。
 FGではゴボウ、チコリー、コンフリー、ニンジンなど。

⑦蔓性植物 ー 木々に絡みつき、光を求めて高く登る植物。フジ、ノウゼンカズラなど。
 FGではキュウイ、ブドウ、アケビなど。

 このように、森は7つの構造でできています。フォレストガーデンは、これを食べられたり、燃料になったり、薬になったり、綺麗な花を咲かせたり、涼しい木陰を与えてくれたりと、人にとって有用な植物で構成します。すると、お互いの植物が成長を助け合ったり、草を抑えたり、病害虫の発生を緩和したりして、人の手入れを最小限に抑え、しかも森のように自立した、持続的な恵みをもたらしてくれる環境になるのです。肥料や農薬もいりません。人の暮らしからでる生ごみや糞尿、排水が森の肥料となり、生き物に必要な食べ物や住処はこの森が生み出し、循環していきます。つまり、1つの場に7つの畑を重ねるのです。すると、そこから得られる豊かさは、ひとつの作物を作る場合と比べ図り知れません。

 そして、これだけではありません。そこにきのこ、ミツバチ、鶏、魚、鴨、ヤギ、豚、牛、ウサギなど、人とずっと一緒に暮らしてきた愉快な生き物たちという畑も重ねられます。実に十数種類の畑が1つの場所に重なるのです。こうして、そこに多様な生き物が生きていける環境が生まれ、それらと自然に生えてくる植物のバランスを保てば、森のように自立した生態系が生み出されるのです。どうです、ワクワクしませんか(笑)?

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(フォレストガーデンの7つの畑 + きのこと池。立体的で、若い森をモデルとした自立する生態系システム。)

 これは決して広大な土地や田舎でないとできないのではありません。都市部の小さな庭や畑でも実践可能です。こういう小さな庭や畑が都市に溢れたら、都市の住環境は激変するでしょう。そこはまさに、人が自然の一部であるということを実感し、謙虚に自然体で暮らしていける暮らしのオアシスとなることでしょう。

 私はこのような森づくりを仲間と一緒に行っています。お庭作りの多くは都市部です。我が家のフォレストガーデンは山の中なので、また趣の違ったものになっていくことでしょう。皆さんも是非、少しでも自分の暮らしに緑を取り入れてみてください!きっと心地いい変化が起きますよ~。

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(都市部で作ったフォレストガーデン。小さな空間でも、高木や灌木、草本類、野菜、デッキなどの構造物を組み合わせると、立体的で奥行きのある空間に変わる。この庭にはたくさんの虫が来るようになり、子どもとお母さんがアゲハ蝶のサナギを捕まえ、孵化する瞬間を楽しんだりしている。)

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(オーストラリアのフォレストガーデン。もともとそこにある植物(自然植生)と、人間にとって有用な植物が見事に融合し、森のような立体的な空間を創っている。ここには、食べられるもの、繊維になるもの、薬になるもの、保存すべき貴重な種類のリンゴの木などが、互いの成長を助け合うように植わっている。)

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天野圭介

天野圭介(あまのけいすけ)
静岡県 浜松市

1985年神奈川県生まれ。2歳の時に父が脱サラし、静岡県の山奥でペンション経営を開始。そこでの自然と一体となった暮らしを原点に、アフリカ諸国を旅した後、オーストラリアでパーマカルチャーを学ぶ。帰国後、2014年、郷里に近い浜松市にて就農、農園『ONE TREE』を始める。米や大豆をメインに栽培。2015年には、世代を超えた有機農家の連携を図るために「ラブファーマーズカンファレンス」も開催した。

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