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2021.03.02

|九州勉強会|宮崎・川越俊作さんに学ぶ「自然栽培」の土作り

SHARE THE LOVE for JAPAN(以下STL)では、地域やテーマごとに参加農家が集まり学び合う勉強会が開催されています。

宮崎県の自然栽培農家・川越俊作さんに学ばせていただく第1回目の勉強会を昨年7月に開催しました。(レポートはこちら|九州勉強会|宮崎・川越俊作さんに学ぶ「自然栽培」畑作

その後、さらに川越さんに学びたい参加農家メンバーの声を受けて、第2回目となる宮崎勉強会が昨年12月に開催されました。今回は、自然栽培を初めてから1年目、8年目、16年目というそれぞれの圃場の土を実際に掘ったり触ったりしながら、その土作りの過程で川越さんがされてきたことを教えていただく貴重な機会となりました。

勉強会の詳しい内容は、こちらからご覧いただくことができます。
「革新者 川越俊作に学ぶ 土作りとは、土戻し。本来の土の姿に戻すということ。」

実際に参加した農家メンバーが語る感想は以下のレポートをご覧ください。

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|開催概要|

日 程:2020年12月8日(火)9日(水)
講 師:宮崎県宮崎市田野町 川越俊作さん(自然栽培)


|参加者のレポート|

松本真実さん|滋賀県東近江市

「適地適作」という事を学んだ旅

 今回の学びの旅は、まず自分の畑の土を掘るところから始まりました。せっかく土づくりのスペシャリストに会いに行くのだから、土を見ていただこうと思い土壌を採取したのです。私の畑は、肥料分が少なく、作土層の薄い砂壌土です。緑肥から堆肥まで5年間色々な土づくりをしてきましたが、未だに効果をしっかりとは実感できず迷いがあります。畑は一か所に集約していても、畑ごとの性格はばらばらで、作りやすい作物にも個性が出ます。化学性成分分析をすればほぼ同じなのに、インゲンがとてもよくできる畑と、全然できない畑があり、その違いがどこから来るのだろうか?という長年の悩みも、今回ヒントが見つかるような気がしてわくわくしていました。

 田野町は、桜島火山由来の黒ボク土が続く丘陵地で、伺った時は漬物大根収穫のシーズンが始まったところでした。長い大根を積載した車が町中を忙しく走り回り、畑作をしやすそうな土地柄が見てとれます。高くそびえ立つ大根櫓も圧巻でテンションも上がります。

 川越さんの土づくりはとてもシンプルで、緑肥エンバクを育て、しっかりと枯らしてからすき込む事を基本としています。多くの試行錯誤と失敗から、そのシンプルな方法に行きついた事がお話から分かります。そうやって、長い場所では20年近く土づくりを行ってきた畑を、今回は実際に土を触って、掘って、嗅いで、雑草を抜いて、根っこを観察して、比較する事が出来ました。五感で学ぶ土づくり。

 耕作を始めたばかりの土壌は、エンバクをローテーションに入れつつ、玉ネギ、にんにく等作土が薄くても育てやすいという作物を植え付けていました。実は私は、ここの畑でも、素晴らしく良い土だなと感じてしまいました。しかし、しっかり土づくりをした畑はやはり違っていて、土が圧倒的に黒くて軽く、また地温が違う事を実感しました。実際に、他の畑に雪が積もった時でも、ここの畑では雪が溶けるとの事でした。雑草が指ですっと簡単に抜けて、その雑草の根っこの白さもとても印象的でした。(そして、雑草が少ない!)

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 完璧なふかふかの土では、立派な人参や大根が、慣行農法と変わらない栽培期間で収穫できるとの事でしたが、どんな野菜でも作りやすくなるというわけではなく、葉菜類、果菜類等主に上へ上へと成長する野菜にとっては土が軽すぎるようで、重機で土を固めたり、定植後に鉢周りを足で固めたり、独自の工夫をして栽培をコントロールしていました。この点が、他の自然栽培農家さんとまた違って、非常に興味深かったです。肥料に頼らない自然栽培では特に、土壌物理性の違いが顕著に影響するのだろうと考えながら話を聞いていましたが、同時に私の中で「良い土」ってなんだっけ?という初歩的な疑問にぶつかってしまいました。どうやら私は、「良い土」とは、漠然と「どんな作物でも作りやすい土」だと思っていたのだと思います。

 私の畑の2か所の土(インゲンが作りやすい畑、インゲンが作りにくい畑)の土を、川越さんと参加者に見てもらいました。どちらも作土層20cmの下はスコップも入りにくいガッチガチの土なので、土づくりが不十分なことは認識していました。しかし、川越さんはインゲンが作りにくい原因を「土が軽すぎるからじゃないか」と分析してくださいました。私は、作土層の薄さばかり気にしていたので、結構衝撃を受けてしまいました。実は、川越さんの畑を訪問してから、この文章を書いている2か月後の今日まで、この事をどう理解したら良いかについてずっと悩み続けています。(三重県で研修していた時の強粘土土壌の感覚を、砂壌土で耕作している現在も引きづっている気がします…)

 私は、今回川越さんの畑を訪問して、適地適作の意味を少し理解できた気がしました。肥料を入れ、全国同じハイブリッド種を作っていると忘れがちですが、肥料によらず、土本来の物理性に依存した適作があるという事を気づかされました。また、もっと気持ち良い土壌に変えていけると希望も見つける事が出来ました。
 
 川越さんは、どの畑でも1畝程度、主要作物の他に不向きな作物等、違う作物を植えて栽培実験を行っていました。経営スタイルが確立した現在でも、研究し続ける姿勢が印象的でわが身を省みました。

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田中真由美さん|滋賀県長浜市


 夏の勉強会の動画を見て、今後の農業のあり方としての可能性を感じ、自分自身の栽培にも取り入れたいと思い、参加しました。
 前回の動画を見てある程度の内容は頭に入れていましたが、実際に畑を見学したことで入ってくる情報が格段に具体的になりました。様々な段階の畑の様子も見せていただいたので、自分の地域で可能かどうかも検討出来ました。

 この栽培の一番の魅力は、農家の負担が減っていく点だと思います。川越さんに1か月ほど前に収穫したという人参をいただいたのですが、どう見ても1か月前に収穫されたとは思えない新鮮さと歯ごたえでした(生で食べました)。保存期間が長いということはそれだけで作業の負担を軽減してくれますし、コストを最大限に抑えられ、作業効率も上がるとなれば、栽培も販売も、自由度がぐっと上がります。すごいなと思いました。

 取り入れる上での問題は、「土づくりから始めて、収入に結び付くまでの時間」が長いことです。川越さんも無理はしてはいけないと話されていました。耐えるだけの持久力がこの栽培には必要ですが、時間をかけて培うものは、すぐに取り入れることが難しい分、大きな武器になることと思います。自分が一番やりやすい形で、教えていただいたことを実践していければと思います。

 川越さんには時間ギリギリまでお話を聞かせていただき、また、美味しい食事をご用意していただき、川越さん、ご家族の皆さん、挑戦者の野崎さんなど、多くの方の暖かい心遣いを感じる研修会でした。川越さん、SHARE THE LOVE for JAPANの皆様、参加させていただいてありがとうございました。

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安井千恵さん|京都府 京都市


 自分の栽培方法についてこれで良いのか、これからどう伸ばしていけば良いのかという疑問があったので、栽培方法のヒントを得る為に参加をしました。こんなチャンスはなかなかないので絶対に参加しないとこれから進化できないと感じて参加させていただきました。

 「畑の外から持ってきたものは基本畑には入れない。土づくり、施肥に対しては、えん麦を撒いてすき込むことを長年続けていくことを繰り返す。」という考えを知りました。すぐに実践することは経営的に難しいので数年かけて徐々に、自分がいま借りている畑の様子を見ながら「えん麦を撒いてすき込むことを続けてできた畑」に切り替えて行きたいと考えています。まずは、えん麦を植えて数パーセントでも畑の土の状態をよくしていきたいです。

 「土づくりを通して人として成長していくこと」という川越氏のお言葉を聞いてから、日々生活の中で起こる現象をどのように捉えて、自分はどうしていきたいかもより一層考えるようになりました。

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