2019.08.30
|STL米部会|10ha規模で肥料も農薬も使わない米作りをする村田光貴さんに学んできました
SHARE THE LOVE for JAPAN(以下STL)では、地域やテーマごとに参加農家さんが集まり、農業技術などについて学び合う機会が生まれてきています。今年2月5日(火)・6日(水)には、米作りを行うSTLメンバーが村田光貴さんの圃場に集まり勉強会が開催されました。
村田さんが参加者に伝えた内容は、「革新者 村田光貴に学ぶ『代掻きは除草。草に負けない米作り。』」 でご覧いただくことができます。この勉強会での学びを、参加者の皆さんがご自身の田んぼにどのように活かしてどのような効果があったか、その後の詳しいレポートは下記をご覧ください。
|開催概要|
日 程:平成31年2月5日(火)・6日(水)
内 容:2日(火)15:00~18:00
視察(お米倉庫 / 農機具 / 圃場)・座学「肥料も農薬も使わない米作り」
5日(水)9:00~11:00
座学・質疑応答
講 師:農未来 NOU FUTURE 村田光貴さん(大分県国東市)
場 所:大分県国東市
参加者:15名ほど(STLメンバー 東樋口正邦さん、髙松賢さん、大島雄さん、八兒美恵子さん、国東市ほか各地から農家、新規就農者など)
|参加者のレポート|
● 東樋口正邦さん|奈良県平群町
村田さんとは、STLの参加農家として出展した「オーガニックライフスタイルEXPO」で知り合いました。お米を作っていらっしゃるという事でお話を伺うと、夫婦で12ha自然栽培、籾蒔きは2月、震災後移住先でお米を初めて栽培、などという驚き以外の何ものでもないお話とそのお人柄に魅かれ、1年越しで村田さんの圃場での研修がSTLのサポートで実現しました。学びたい所へ行かせて頂いたことで、多くを学び、そのまま実践することが出来ています。
学んだ事
0.入水により、陸から水中へ
冬乾燥状態にある田んぼに水を張る事で、田んぼの環境が陸から湿地に変わる。そこに暮らす生物も水の生き物になる。入水してからしばらく時間を置く事で田んぼを水の環境に慣らす。完全に水の環境になった田んぼに苗を植えることが大事。
1.チェーン除草のタイミング
田面の泥を手で撹拌し、雑草の発芽種子が浮いてくる頃。命が動くと水に浮く。
(チェーン除草して草の根が浮いてくる様子)
2.お米の品種には感光性と感温性のものがある
感光性の「ひのひかり」は早く植えても出穂時期は同じだが、感温性の「ササニシキ」は蓄積温度で出穂を迎えるので、時期をずらすことができる。
3.環境のいい田の特徴
水面がキラキラしていて、静か。何度も代掻きを繰り返すとキラキラしてくる。アミミドロやサヤミドロが発生する。
(田んぼが清浄な環境で発生するアミミドロ)
4.代掻きは除草
代掻きは田面均しだけではなく、そこに生えた水草の除草になる。その効果を発揮させるため、一度目の荒代掻きから植え付ける前の代掻きまで一週間以上空ける。代掻きは何度やってもいい。
5.荒代掻きでの均平出し
一回目の代掻きで田面の高さを限りなく水平にすることで、土が空気に触れて草が生えるリスクをへらし、稲刈り前に水を切る時に均等に乾くように出来る。
6.深水管理
草が自らの浮力で浮く。稲が柔らかく育ち、手触りが違ってくる。
上記全て実践しています。「2」の項の時期をずらした苗作りは、圃場整備も必要なので、今年は未実施ですが、面積拡大していく中で必ず役立っていきます。今年は感温性の「ささしぐれ」という品種を村田さんから分けて頂き、試験的に栽培をはじめました。現状の実施報告としては、去年までなかなかの草だったので、上記を実践しても完全な除草までは至っていませんが、草との戦いに終わりが見えてきています。本当に素晴らしい勉強会でした。苦労の結晶を、研修のために時間を掛けて説明資料にして頂き、当日笑いとともに全てさらけ出して頂いた村田さんに感謝します。
(あみみどろが暑さで枯れて水草に変わっていってます。田んぼの土の面に光が差さない為、抑草効果のある状態になった田んぼです!)
● 髙松賢さん|大分県臼杵市
大分に移住して3年、それ以前もお米作りをしてきましたが、代かきしない不耕起の自然農による栽培でした。
大分に来て最初の2年は鍬で代かきし、昨年からは知人から譲っていただいた管理機を使うようになりましたが、いずれにしても我流で、代かき田んぼのことはまったくわかっておりませんでした。村田さんのところには以前から行ってみたいと思っていましたので、お米の勉強会が開催されるとのお話をいただき、これは行くしかないと思い、参加させていただきました。
村田さんはたくさんの機械をそろえていて、それらをとても有効に使われている印象でしたが、機械をほとんど使ったことのない私にはほとんどわからず、そこの部分に関しては、自分の田んぼで生かすことはできませんが、それ以外に参考とさせていただけることはいくつもありました。
まず、耕起のタイミングですが、どの田んぼも同じようにされていると勝手に思いこんでいましたが、100枚以上の田んぼをされているにもかかわらず、田んぼの土質や草によって、早くしていたり、そのままにしていたり、一枚一枚田んぼごとに違う管理をされていることに驚きました。
また、種籾の準備では、温湯消毒を今はしておらず、真水選のみでされていて、「気持ちよくお米を育てたい」と言っておられたのが、印象的でした。忙しい中でも、お米のことを考え、よく観察し、とても丁寧に栽培されているのが伝わってきました。お米、田んぼとちゃんと向き合っていく大切さを教えていただいた気がします。
今年、自分のお米作りで生かしたことは、除草のタイミングです。確か、田植え後3日で、草が見える前に除草に入るお話でした。私は昨年まで、畑に手がとられることもあり、田んぼの除草はある程度草が生えてから行っていました。今年は田植えして3日の除草とまではいきませんでしたが、早めの除草をこころがけ、少しだけ草が生えている部分がでてきたタイミングで行ったところ、2反の田んぼを1日かからずに終わらせることができました。時間的にも早かったですし、草もまだ根がちゃんと張れていないので、いつもより楽に除草できました。
今年の除草は手作業で、鎌を使ってでしたが、来年は、村田さんのされているチェーン除草で、さらに早く除草に入れれば更に効率的にできると思いますので、そうできるよう段取りできたらと思っております。このたびは、お忙しい中貴重な時間を使ってくださった村田さんご夫妻、有意義な勉強の機会を与えてくださったSTLの方々にとても感謝しております。ありがとうございました。
● 大島雄さん|愛媛県宇和島市
私は昨年初めて米作りを始めたのですが、急遽始めることになったために準備不足で、草対策も水管理くらいしか行えず、結果見事な草だらけの田んぼにしてしまい、苦い米作りデビューとなってしまいました。
今年はその反省もあり、村田さんの研修を受け、出来そうなことから取り組んでみました。
今回村田さんの研修に参加させていただき、参考になったことは本当に多かったのですが、特に印象に残っているのは、「未分解の有機物を残さない」ことと「命が動くタイミングを逃さない」ということです。
まずは「未分解の有機物を残さない」ため、入水する前から浅い耕うんを繰り返し、残渣の藁がほとんど見られない状態にしてから入水し、粗代掻きは2回行いました。昨年に比べ、入水後の田んぼの状態が水も温かく、落ち着いていたと思います。
そして除草ですが、見せていただいたチェーン除草機をホームセンターで材料を購入して自分でも作ってみました。そして田植えから5日後、「命が動くタイミングを逃さず」、ギリギリでしたが稲が活着したのをみてすぐにチェーン除草機を引っ張りました。するとヒゲのような根の生えた草の種がプカプカと。。。そして1ヶ月間は5、6日おきにチェーン除草をかけました。おかげで今現在でも田んぼを俯瞰した時、条間に目立つ草はほとんど見られません!
ちなみに、地域の方から勧められた方法として米ぬか散布も行ってみました。初回のチェーン除草と同時に1反7畝に300kgを投入。遮光効果と米ぬかを餌にする微生物が分泌する有機酸による雑草の発芽抑制を狙いました。こちらも草の発芽抑制には効果があったと思います。
村田さんから学んだことを生かし、今年は今のところ草対策はうまくいっているようです。ただ植えた時期もあり分けつが弱いようです。稲の健全な生長や収量増加のために何が出来るかを課題に、今後も取り組んでいきたいと思います。
● 八兒美恵子さん|福岡県飯塚市
「国東の鬼のいる里でお米について学んできた。その結果は…」
「自然栽培で米を10町も作っているんですか!?」
村田さんの経営規模を聞いて以来、どんな風にお米を作っているのか気になってはいましたが、地味に遠い国東半島。今回その気になっていた国東にようやく行く事が出来ました。
大分と福岡、隣同士の県ですが、九州は思っている以上に広い。
福岡から村田さんの圃場のある国東市まで車で2時間半。大分県に入った後も二つの岩山(昔は鬼がいたらしい!) を越えてたどり着いたのが村田さんの圃場のある来浦という集落でした。
お米農家特有のお米を保存している大きな倉庫は、村田さんご自身で基礎工事をして建てたという輸入物でとても格好いいものでした(私も建てたいです)。農機具を置いている倉庫もあちこちに点在していましたが、どれも自ら建てられていて、「コストを抑える」という村田さんのスタンスとバイタリティを感じる物でした。それをサラッと言ってしまう村田さんスゴいです…。
圃場や倉庫を見回りながらの説明と雑草防除、良い水草の生える良い圃場の作り方、米の育て方について分厚い資料での充実した講義を二日間ガッツリしていただきました。村田さんの論理的で分かり易い講義は、お米を作り始めて3年の私には本当に勉強になりました。
今年のお米作りは、今まで取り組んでいた合鴨農法をお休みして、ほぼ自然農法でお米を作ろうと始めました。合鴨をやめた理由はいくつかありますが、一番は労力が掛かりすぎるという点。村田さんの勉強会で感心したのが、「労力や動力、燃料を極力減らす」と言う事。「燃料が掛かるからトラクターを田んぼに入れるのも1回くらい」という極力手を省くというスタンスは、忙しい農家だからこそ考えていかなければならないと思いました。
苗作りも村田さんの考えを取り入れてみようと、慣行のお米農家が必ず行う「塩水選」を省き、馬鹿苗病を防ぐ「温湯消毒」も通常の70℃から50℃に下げてみましたが、今までとあまり変わらないのかな?という結果でした。
(村田さんに伺ったら今年は温湯消毒すら省いているそうで、更に驚きです)
(田植え前の箱苗。疎植にし過ぎて田植えの時に苗取りが大変でした。もう少し早めに播種すればよかった…と反省)
田植え前後の流れとして「代掻きを早めに行い、最初に草を生やした後、それを根絶やしにするための本代掻きを行う。その5日以内に田植えと初めの雑草防除を行う」というのを教えてもらいました。いざ実践しようと、最後の代掻きから2日後に田植えは出来ました。…ただ今年の九州北部はいつまでたっても梅雨が来ない!代掻きをする水は確保出来ましたが、田植え後に田んぼに充てる水がありませんでした。だから、チェーンや箒で除草するにも除草した種や草が浮くための水がありません。「これでは草が生えてしまう…」と頭を抱えていたのですが、逆に浅水でジャンボタニシが雑草を食べ易い環境だったようで、結果的にはほとんど草が生えずに済みました。
村田さんは「イネ科はとても強い」と良く仰っていて、お米作りをしているとそれをとても実感します。慣行でお米を作っている友人から、今年いもち病が発生したという話を聞きましたが、私の圃場では全く見られませんでした。また、日照り続きで水が充てられなかった間もなんとか耐えてくれました。野菜と比べると本当に手間をかけていません。「稲は強いなぁ」としみじみ。これから収穫まで、まだ台風などの自然災害が待ち受けていますが、力強い根張りをみるかぎり倒伏の心配はしていません。
既存、慣行の農法に疑問を持って自ら調べて考えて行動していく。農業経営者としてあるべき姿を村田さんに教えていただき、今回の国東の勉強会に行って良かった〜!と感じました。
(箱苗で疎植にしたので欠株がちょこちょこ出てしまいましたが、草が生えなかったのはありがたい事です。まだまだサヤミドロ、アミミドロの生える圃場ではありませんが、いつか生えるように圃場改善して行きます!)
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