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2019.05.28

|2017挑戦者研修レポート|有機農業界を牽引する千葉康伸さんの圃場に行ってきました

今冬1月22日(火)〜23日(水)、SHARE THE LOVE for JAPANの2017年挑戦者5名と開拓者2名が、緑肥を使った土づくりや栽培技術、農業経営に関するヒントを学ぶべく、神奈川県愛川町で有機農業を営む「NO-RA〜農楽〜」千葉康伸さんの元へ研修に行ってきました。圃場の視察に加えて、事前に参加者自身の畑の写真や質問事項を用意して、自らが直面している疑問点にアドバイスをいただけるよう研修に臨みました。

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千葉さんが参加者に伝えた内容は、「革新者 千葉康伸に学ぶ「就農1年目から自立できる農業」」 でご覧いただくことができます。この研修に参加した皆さんが書いたレポートは下記をご覧ください。


|開催概要|

日程:2019年1月22日(火)23日(水)
講師:「NO-RA ~農楽〜」千葉康伸さん
場所:神奈川県愛川町
スケジュール:
1日目 千葉さん宅の育苗ハウスの見学から始まり、農機具・ニンニク乾燥ハウス、出荷・調整場、圃場の見学、千葉さんの講義を受け終了。

2日目 午前中、引き続き千葉さんの講義。その後、千葉さんの圃場をいくつか見学、昼食、その後、圃場に戻り、ニンニク畑での除草作業にて、2日間の研修終了。

内容:
● NORA畑の作り方・意識していること
● 栽培技術(緑肥・太陽熱消毒・畑まるごと堆肥化など)
● 栽培品目・作付け(考え方・土のレベル別作りやすい作物など)
● 販売
● 農業経営 
● 農作業(ニンニク除草)

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|参加者のレポート|

吉田壮伸さん|和歌山県和歌山市
SHARE THE LOVE for JAPANの先駆者である故山下一穂さんの講義を以前受けた時に野菜の写真を見せて頂いたのですが、「このレベルの野菜が自分で作れたらきっとすごく楽しいだろうな」と思ったのを覚えています。一穂さん亡き今、一穂イズムを受け継ぎ、有機農業を引っ張っていらっしゃるのが千葉さんということで、作付計画〜育苗〜栽培〜収穫〜販売〜売上の分析等、農業のプロセス全てにおいて、貪欲に吸収できるものはしてこようという思いで参加させて頂きました。自分の栽培に採り入れたいと思った3点について挙げたいと思います。

1.夏野菜を引っ張りすぎないこと
夏野菜はナス、ピーマンといった果菜類が中心になってきますが、この果菜類の収穫を引っ張りすぎると、11〜3月に収穫する作物の作付が遅れてしまうとのことでした。言われてみれば私自身、夏野菜を長期収穫していて、冬場の収益性に課題があったので、早速今年は秋冬野菜にスムーズに入れるように、例年より夏野菜を抑えた作付計画にしました。

2.とにかく省力化
千葉さんの農園には研修生の方も5、6名働いていらっしゃっていて、私に比べればはるかにマンパワーがあるのですが、それでも以下のように随所に省力化の取り組みがされていました。

・生育日数の異なる複数種類の野菜を同じ日に播種し、収穫をリレー方式で行う
・収穫時に、ほぼ袋詰めができる直前の状態にする
・出荷調整時は余計な土を落とすだけ。洗わない。
・植え付けは雨の前日。潅水は基本的にしない。
・可能なものは直播き(タマネギ等)。直播きは定植時のロスがなく、根が発達するので肥料も少なくて済む。

文字面で見れば当たり前のように思える内容かもしれませんが、この省力化をするための細かいノウハウが実はたくさんあるわけで、省力化するために自分にどんな技術が足りていないか今一度考えてみようと思いました。

3.出荷ポリシー
千葉さんが独立して農業を始めた時に、以下のポリシーを決められたそうです。

・ネームバリューがない自分が農家を続けるには商品の力がすべて。
・秀品のみを出荷し、消費者に良いイメージを与える。
・値段もある程度安く、普段使いできるように。
・袋詰めを丁寧に。

農業をしていると、いわゆるB品がどうしても出てきてしまい、私は値段を下げて販売をすることもありますが、秀品のみの出荷をすると決めて、自分にプレッシャーをこれまで以上にかけてB品を極力減らす方向に持っていった方が、技術的にも収益的にも長い目で見ればプラスになるのかなと。秀品のみの出荷は簡単なことではありませんが、自信を持って消費者の方に買って頂けるような野菜をたくさん作っていきたいと思います。

2日間にわたり、千葉さんには色々な部分を見せて頂きとても感謝しています。包み隠さずオープンにする姿勢、オープンにできる農場作りというのも、これからの農業を引っ張っていく農家にとって必要な要素なのかなと思いました。

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藤原直樹さん|鳥取県伯耆町
今回訪問させていただいた千葉さんは、私が研修を受けた、多品目野菜の有機農家である故山下一穂さんの先輩研修生に当たるので、同じ研修を受けた方がどのように営農されているか、非常に興味を持っていました。

千葉さんは多品目栽培をしつつ、経営の主力になる作物として人参、玉葱、ジャガイモ、里芋、かき菜などを栽培し、特定の販路に販売する形をとられていました。

千葉さんの話の中で一番心に残ったのは、「市場価格の低い作物はそれだけ需要がある」ということでした。そのような作物は、相対的に自分の価格が高くなり、販売しにくいと思っていましたが、需要の高い作物を高品質に作って供給することはとても価値があることだと気付かされました。今、割と均等に多品目で野菜を栽培していますが、自分のやるべき、やりたい営農スタイルについて柔軟に考え、進歩していきたいと感じさせてもらえた研修となりました。今回、どんな質問にも具体的に答えていただいた千葉さんと、研修機会を設けていただいたSTLに改めて感謝いたします。

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牧野萌さん|北海道蘭越町
千葉さんは有機農業で成功している方ということで、圃場、経営、すべてにおいて、学べる何かがあるだろうと思いました。また、私以外の参加者が、どういう視点なのかを知りたい、美味しいといわれる有機農産物の味を皆で共有してみたくて参加しました。

私の師匠は、雑草堆肥100%の土で、難しい土作りなしに、美味しい野菜を作っています。「植物性堆肥は、どんなに入れすぎても悪さをすることがない」というのが師匠の持論。だから、雑草堆肥さえ仕込むことが出来れば、誰でも簡単に有機野菜を作って食べることが出来る。でもそれは、雑草がたくさん手に入れば…の話です。師匠は、河川敷の刈草を独自ルートで運んでもらっていて、それを私が真似しようとしても、大人の話上、なかなか難しい。農業地にすき込む量を自分で集めようと思っても、その量は膨大で難しい。結局は毎年、土の勉強もままならないまま農業シーズンに突入してしまい、肥料会社による土壌分析&施肥設計にゆだねてしまうのでした。でも、有機肥料といっても海外の物だったりして、なんだか腑に落ちない。他の方法を探ってみるけど、土地土地で揃う資源が違ったり、行程が労力的に大変だったりと、なかなか「これ」というものに出会えませんでした。

今回、神奈川の千葉さんのところには、「北海道に応用できる何かヒントがあったらいいな」という程度で思っていたのですが、千葉さんの農業からとても汎用性のある土作りを学ぶことができて、それはそれは、とても有意義なものになりました。その土作りの方法は、『緑肥を育たせ、すき込み、土の中で堆肥化してから、作付けを始める。収穫後は残渣をすき込み、再び緑肥を蒔いての繰り返し。また、それに加え、足りなくなったミネラル分を補ったり、栽培に必要な分の油かす(窒素)を補充したり、作付けによって臨機応変に備える』です。使うのは、土壌分析結果・緑肥の種・ミネラル肥料・油かすだけで、とてもシンプルです。

千葉さんの農法は、私がやりたかった蘭越の師匠の雑草堆肥による栽培にも通じます。お昼をご馳走になったレストランのお食事は、千葉さんの作った野菜が使われていましたが、師匠の家で食べるような、やさしくて美味しい、食べ慣れた味でした!今年は、千葉さんのスタイルを軸にして、やってみます。暗中模索状態だった有機農業の栽培スタイルでしたが、期待に胸が躍るようになった研修でした。まだたくさん、刺激になった・勉強になったことはあるのですが、自分の中に落とし込むことができた内容に絞って、レポートさせて頂きます。

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椿幸久さん|千葉県旭市
今回一番の目的は、自分が新規就農3年目(有機農業2年半)を終えようとしている今、自分と同じ頃の千葉さんの経営状況、そして、その頃の千葉さんの農業経営者としての考え方などを聞く事、また、それを今現在の自分と照らし合わせ、そのギャップを知る事。これが一番の課題でした。宿泊宿での千葉さんの講習、夕飯、風呂、寝る直前まで参加したSHARE THE LOVE for JAPANのメンバーとひたすら農業話をしまくる、とにかく、本当に農業三昧の1泊2日の研修でした。

今回の研修を通じて、はっきりとまだ言葉に表現するまでには整理ができていませんが、畑で表現する前の段階の考え方や、今の自分のヒト・モノ・カネをいかに経営していくかという事の大きなヒントになったような気がします。特に、月間の働き方の比率【収穫・作付け・収穫など】について考えることは、大きな発見でした。ですので、今年はそのことを特に意識して取り組んでいきたいと思います。この度は貴重な研修をさせて頂きまして本当にありがとうございました。

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中武海咲さん|宮崎県宮崎市
農業学校時代のときに山下先生の講義を聞き、先生の畑に感動しました。有機農業で効率的に作業し、収入もしっかりとした農業をされていたからです。なおかつ、路地栽培だったので驚きました。一度その見学をしたいと思っていて、千葉さんは山下さんのお弟子さんと聞いて「絶対に行きたい!」と思い参加しました。学びたいことは、「①マルチの張り方」「②作付け計画」「③夏の苗つくり」についてでした。

「①マルチの張り方(草対策の通路)」
「畝の高さに合わせてマルチを張ると風にあおられはげてしまうから、畝の高さに合わせるのではなく、畝の一番低い部分に合わせてマルチをしいて固定していく。そうすると畝が風よけになってくれマルチがはげない。」というアドバイスをもらい実際にやってみるとその通りでした!今までは、風であおられはりなおしたりしていましたが、改善できたのでよかったです。

「②作付け計画」
ホワイトボードに畑の図を描き、そこに何を植えていくのかや、土壌の状態を書き込み、スタッフが読めるようにしていました。そして、終わったところからすぐ片付けし次に切り替えていく。そのことで、効率的に畑をまわしていくことができます。私もさっそく帰ってホワイトボードを購入し書き込みました。そうすると、自分がいまやるべきことがすーっと頭にはいってくるので、少しは一歩前進しました。

「③夏の苗つくり」
「光の加減が大切」とアドバイスをうけました。いつも失敗するので、今年の夏は遮光ネットをかけてやりたいと思います。

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大野收一郎さん|奈良県奈良市
以前、高知での千葉さん研修に参加させて頂いてから、千葉さんの栽培技術や考えをもっと学びたくて、FacebookやAIC横浜農場の授業風景をチェックしておりました(笑)。その事で、疑問質問が生まれていたので、今回の研修の機会をいただいた時、事前に質問をまとめてから参加でき、当日聞き忘れてしまう事はほぼなかったです。

具体的には、
・「土のレベル」に対してのレベル別の適性作物・難易度
・緑肥の月別播種可能なものや活用法
・「夏作より秋冬作重視」→8.9.10月の働き方、特に8月の仕事が11-3月まで響く、8月は千葉さんは収穫20%・作付準備80%」 というコメントには驚きました。
・茎ブロッコリーの収量アップ法→ガッツリ取る事で次の脇芽が良く出る
・大野のトラクター入れない圃場では、時短の為に「畝崩さず一部耕運法」を実践しているが、千葉さんはこのやり方をどう思いますか → 周りには否定されていたが、千葉さんだけは肯定してくださったので自信になりました。
・玉ねぎペレット化しての、直蒔き方法
・防草シート活用法
・省力多収
・キレイな野菜だけをキレイに袋詰め
・前日にスケジュール決め、当日朝は動くだけ
など、とても実践的で充実した学びの機会でした。

今回、みんなの質問タイムで、各自の「圃場の写真」を持ち寄って質問する形式はとても良かったと思います。質問回答の具体性が高まるだけでなく、まわりの人が仲間の圃場を理解するきっかけにもなり、その後の時間でも各自が教えあう話しあう関係になっていたように感じました。とても貴重な機会をありがとうございます!

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宮﨑康介さん|長野県長野市
育苗管理や栽培方法、道具の使い方など具体的なやり方を知り、自分との違いを確認したくて参加した。得られた学びとしては、以下。
・例えば育苗に関して、どのような点に気をつけて管理をしているのか(水分量や具体的な使用資材)をある程度確認できた。
・経営方針の全体像がある程度わかった(年間通じてどんな種類の野菜をどのくらいの構成比で作付けしているのか、年間の中での仕事の配分やどこに出荷のピークを考えているのかなどを知った)
・自分とは販路や野菜を提供するうえでの目的が異なるため(自分の場合はあくまで個人の飲食店様や個人向け野菜セットをお届けすることが経営の主軸であり、小売りなどに品目を絞って販売することの優先順位は最も低い)、作付けに対する考え方(収穫に追われる夏野菜を減らす、品目を絞るなど)など対照的であった。
・都市型農業と地方での販売方法の違いも確認できた。

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