SHARE THE LOVE

2019.04.15

有機の里「埼玉県小川町」視察ツアーを開催しました

参加農家交流会の翌日は、参加者有志で埼玉県小川町を訪れ「小川町と有機農業について」学ぶ1日となりました。

SHARE THE LOVE for JAPANでは、プロジェクト開始当初から、有機農業の先駆者として知られる霜里農場・金子美登さんを取材させていただきました。40年以上前から「循環型農業」という方法で、野菜や米、大豆などを育て、自然エネルギーの活用まで行う霜里農場は、有機農業を志し門戸をたたく人が後を絶たず、いまや「町ぐるみで有機農業に取り組む小川町」として知られます。そんな小川町のいまを見てみたいという参加農家からの要望に応えて、「霜里農場」で研修後、同じく小川町で就農された仲澤康治さんが案内をしてくれる機会となりました。

IMG_5041

(霜里農場で金子美登さん・宗郎さんと一緒に)

現在、小川町内の有機農家は「約60軒(全体の20%・兼業農家も含む)」、面積ベースでは全体の「10%」にのぼるそうです。有機農家の人材育成も、町内の研修受け入れ農家や、日本農業実践学園主催の就農準備校、埼玉県農業大学校の有機農業コースなどで行われているとのこと。また、小川町の有機農家は、有機JAS認証を取得している人はおらず、有機農業生産グループに所属し、地元のスーパー、道の駅、直売所にある有機コーナーへの出荷が可能となるそうです。人材育成体制の充実と、生産物を販売する受け皿があることが、地域で有機農家を育て続けていける理由の一つとも言えそうです。そして、その根底にもあるのが金子さんが掲げている「地域自給圏構想」という精神。米は酒造会社、麦は乾麺・パン・ビールの製造会社、大豆はお豆腐屋さんなど、地域の業者と連携して地域で自給を目指そうという構想だと、仲澤さんから紹介いただきました。

IMG_4942

また、霜里農場では、廃食油でトラクターやコンバイン、ディーゼル車を走らせたり、生ゴミを「ガス」と「液肥」に分解する「バイオガスプラント」の利用など、自然エネルギーの活用も随所に見られました。そして、小川町の学校給食の生ごみは「NPOふうど」が「バイオガスプラント」を利用して処理し、「液肥」は米や麦の追肥、野菜苗や果菜類の追肥など、小川町の有機農家の重要な肥料として活躍しているそうです。

IMG_4958

(てんぷら油の廃油で動くトラクター)

IMG_5051

(「NPOふうど」代表の桑原さんからバイオガスプラントについて解説いただきました)

IMG_8201

(直売所の有機農業生産者コーナー)

詳細については、参加者のレポートも是非ご覧ください。

|当日のタイムスケジュール|

 2019年2月11日(月・祝)9:30〜15:00
 1. 「下里分校」にて仲澤康治さんによるスライド解説
 2. 「霜里農場」圃場見学
 3. 昼食「下里分校」カフェモザート
 4. 「JA直売所」見学
 5. 「バイオガスプラント」(NPOふうど)見学
 6. 地元スーパー「ヤオコー小川駅前店」見学 

|参加者のレポート|

渡邉学嗣さん|千葉県山武市
今回小川町に行ったのは、2回目でした。しかし、以前見たときに思ったことと、今見て思うことは違うことが多々ありました。

同じだったことは、やはり「自給・循環の力の高さ」です。廃油の使用や太陽熱発電、バイオガスプラントなど、農園内で無駄なものはほぼないという点には改めて驚かされました。バイオガスプラントの液肥は非常に興味深かったです。違った点は、「地域ぐるみで新規就農者をバックアップする仕組み、ローカルな循環の輪がしっかりしている」と思ったことです。小川町の有機農業者の割合の高さや、金子さんが築いてきたローカルの循環がそれを支えているようですね。目下、わたなべ農園の課題が「販路の拡大」ということもあり、非常にうらやましく感じてしまいました。何事も1人の力では限界があります。でも仲間がいれば、もっと大きなことができる。同じ有機農業をしている仲間の大切さを感じ、それこそSHARE THE LOVE for JAPAN(以下STL)の仲間の大切さにも改めて気づかされました。

これからどのように販路拡大をしていくか。それを解決していくうえで、STLの仲間の存在が鍵になるかもしれません。STLも今年から、農家側が提案して動いていくというスタイルになるということで、自分でも考えてアクションを起こしたいと思いました。今回企画してくださった仲澤さんには本当に感謝しております。この1年、開拓者として何かアクションを起こせる1年にしたいです。

椿幸久さん|千葉県旭市
今回、小川町視察ツアーに参加させて頂き感じたこと、それは下記の点でした。
➀自分で何かを開発したり、工作したり、とにかく創意工夫をしている方々が多いこと。
②農業関係者だけでなく、色々な職業の方々とリンクし、うまく協調していること。
③金子さんなど、これまでの先駆者の方々により、有機農業の下地がしっかりと作られたおかげで、今現在でも、小川町並びに周辺地域では、有機農業の優位性が他の地域よりも非常に高いこと。

この小川町視察ツアーの数週間前に、千葉県の有機農業の基盤となった三芳村に行く機会がありました。そちらでもやはり、小川町同様、今現在でも生産者と消費者が良い関係を継続し、有機農業の優位性を持続しています。今回のツアーは自分にとって、何かをすぐ真似たり、行動をするという事ではなく、現在までの小川町の有機農業の成り立ち、地域の営みに触れることで、有機農業の歴史の一端を知ることができたと思います。今回学んだことを自分が行う有機農業を通してどう表現していくのか、今の自分にはわかり得ませんが、今回の視察ツアーは間違いなく自分の有機農業の糧になったと実感しております。この度は、貴重な視察ツアーを経験させて頂き誠にありがとうございました。

IMG_4977

大渡清民さん|京都府京都市
金子さんが、まだ有機農業が日本で知られていない頃から、信念をもって続けて来られたことが、小川町が今日、有機農業を志す人たちが集まる要因だと思います。そういう仲間が周りにいるというのは、特に新規就農する人や、若い方には心強い場だと思います。これから小川町のように、地域で有機農業を推進する場所を我々が築いて行ければ、さらに日本での有機農業が広がっていくと思います。桑原さんのバイオガスプラントの液肥は大変興味があります。液肥による作物の育成など、将来的に勉強していきたいと思います。

藤原直樹さん|鳥取県伯耆町
小川町は有機農業の大先駆者の一人、金子美登さんがおられ、金子さんを慕う有機農業者が多くいるということで、とても興味を持って視察させていただきました。町に着いてバスを降りると、ひんやりとしていながらも、微生物から動物までいろいろな生き物が存在することを感じさせてくれるような、パワースポットのような空気を感じました。

今回の視察では、金子さんの元で研修されたSTL開拓者の仲澤さんに案内していただき、小川町の有機農業にまつわる歴史や現在の状況などを教えていただきました。有機農業が盛んな町がどのようにして出来てきたのか、言葉で説明するのは簡単でしょうが、金子さんが実践し、色々な行動をして、今多くの人が関わりを持つまでになったことは想像以上のご苦労があったことと感じます。有機農業と言ってもやり方は様々ありますが、その根底には今生きている周りの人々や、そして未来の人々への思いが必要なんだと感じた一日になりました。金子さん、仲澤さん、SLTに感謝し、今後の自分に生かしていきたいと思います。

IMG_4951

牧野萌さん|北海道蘭越町
今回は、小川町の「町としての取り組み」を知りたくて参加しました。小川町は「有機農業の町」という印象があります。実際、今では、有機農業者が全農業者の20%となっていたり、農業専門学校の実践場として指定されていたりします。でもこれはひとえに金子美登さんの意志から始まったことで、金子さんの霜里農場は、小川町の原点であり、小川町の循環型を発信するエネルギー源でもありました。

また、町には学校給食の生ゴミを集めバイオガス液肥やメタンガスをつくっているバイオガスプラントがありました。この設備は、「生ゴミの資源化」を目指し、自然エネルギーを研究する「NPOふうど」が創ったものです。設備投資は800万円、半分はapバンクから借り、半分は仲間内で負担したそうです。町は、資金面ではなく、その運営システムづくりの方で協力しています。ガスの利用については、まだ実験段階のようでしたが、生ゴミ由来のバイオガス液肥は、散布することで美味しい野菜が作れると、地域の有機農業者などが、~2トン、2000円で使っているそうです。(主に追肥に利用)

エネルギーの循環まで可能になりつつある小川町。町が率先し、有機農業、循環型社会へと導いているのかと思っていましたが、このバイオガスプラントの事例でさえ、すべては霜里農場の金子さんの暮らしぶりから地域住民へと波紋が広がったことでした。町は、そんな住民を応援している立場にすぎませんでした。とはいえ、このバイオガスプラント自体は、資源の持続可能な有効利用として、他の地域でも十分真似できると思いました。小川町が制作した資料(生ごみの回収と資源化の取り組みについて)もいただけて、町づくりのヒントとして良いお土産話になりました。

また、小川町は、昔は、酒、豆腐、和紙などの商業が盛んな町。いまでもこれら手工業は続いています。視察の際、JAの直売所に行きましたが、有機野菜コーナーの他、お手頃価格の慣行栽培の地場野菜や加工品などのラインラップも充実しており、客としてとても楽しかったです。有機農業と地産地消は似て非なる物ですが、やはり手作りや地産地消の歴史的な背景があるからこそ、有機農業への理解も進んでいったのかな、とも思いました。

最後に…、小川町は、町民のそれぞれの日常生活が絡まり合い、それにより有機農業カラーの町を作り上げていて、とても素敵でした!驚いたのは、小川町で有機JASをとっている農業者はいないということ。小川町の有機農業者は、有機農業生産グループに所属し、小川有機会という出荷グループに入っているそうです。やはりここでも、先駆者金子さんの存在と、有機農業へ向かった町の歴史を感じます。かっこいい!

余談になりますが、有機JASの認定機関を調べていたら、一つだけ、市町村が認定機関となっている例がありました。山形県の鶴岡市です。民間の機関に比べ手数料が抑えられているようです。有機農業の方向で歩んでいる町は、まだ様々ありそうです。また何かの機会に学べたらと思います。

小島冬樹さん|三重県多気町
私自身、金子さん・桑原さんのところは、就農以前に訪れたこともあり、どう変わり進化しているところがあるか興味がありました。また、3.11以降、初めて東京以北を訪れるということもあり、なんとなく心の落ち着きのなさもありました。当日、質問の中でも少し触れさせていただきましたが、原発事故による放射性物質が降り注いだことによる影響やその対応・対策など、色々と沢山ご苦労があったことと思います。時間があれば、そんな話も伺ってみたかったです。圃場の方は、自分がやっていること、目指そうとしていること、やってみたいと思っていることなど、重なるところが沢山あって、茨城から三重へ移住後も変わらない営農&暮らしのスタイルは、「ああ、間違ってないな」とも感じました。循環のサイクルやエネルギーの時給に力を入れている様子がよくわかりました。薪や落ち葉、藁の利用、踏み込み温床、アイガモ、鶏、生ゴミコンポストなどは、既に私自身も出来ていますが、牛を飼うこと、廃油利用のトラクター、バイオガスは、長年の懸念事項です。またウッドボイラーは是非ともほしい設備だなあと感じました(うちも古い民家で寒いのです)。不織布&トンネルの刃物栽培や、ハウス内5月獲りのキュウリの種まき(研修性さんとお話しました)なども勉強になりました。バイオガスキャラバン(桑原さん)は、現在やっていないとのことですが、「いつかバイオガスを…」と思っています。その他、遠くに見えた柿やイチョウ(ギンナン)の畑も気になりました。寒い中本当に有難うございました。

追伸:ラジオで、徳島県上勝町(STLメンバーの阿部正臣さん)の530(ゴミゼロ)運動=リサイクル率81%の話題をやっていて、そんな取り組みをやっているところがあるということを知りました。

レポート
Report

archive

category

BACK TO TOP