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2016.11.28

熊本 耕す人びと2.「ゆっくり味噌」影沢裕之

「地震の被害からも守られた味噌 美味しいものをゆっくりと育む」

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 4月16日の深夜に起きた本震を、影沢さん親子は自宅そばのビニールハウス内に建てたテントの中で迎えていた。
 「4月14日に起きた前震以来、子どもが怖がっていたので自宅で寝ないようにしていました。本震の翌朝に自宅に戻ると、それまで家族で寝ていた所にタンスが落ちていました。家は壊れましたが家族が無事でいられたことが何よりも良かったです」

 嬉しいことはもうひとつあった。妻の奈緒子さんと二人で作り続けてきた味噌が無事だったのだ。
 「梁や壁が崩れてメチャメチャだった部屋の中で、全部の味噌樽だけが無事だったんです。それを見た時、これからもここで味噌を作っていこうと思いました」(奈緒子さん)
 

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影沢さん夫妻は、「かげさわ屋」として、味噌を販売している。夫婦二人で味噌の原料となる大豆を農薬も化学肥料も使わずに栽培し、味噌の仕込みまで一緒にする。一年間寝かせてから出荷するので、種まきから数えると、2年もの長い時間をかけて作っている。だから、味噌の名前は「ゆっくり味噌」という。

 「うちの味噌は、フクユタカという大豆で仕込んでいます。フクユタカは、香りも華やかだし、薪ストーブで煮ると甘みが出るんです。一時期圧力釜も使ってみたんですが、豆の味が違った。だから、薪ストーブでゆっくり煮ています」
 「味噌作りの面白いところは、自分で出来ることを一生懸命やっても、最終的には麹に委ねるところが面白いんです。待つことが大事なんですよね。そうして、蓋を開けた時に、想像していた以上にいい香りがしたりするので、本当に嬉しくなるんです」(奈緒子さん)

(写真キャプション):毎年少しづつ絵柄が変わる「ゆっくり味噌」のラベルは奈緒子さんのイラスト。今回の地震では、自宅が崩壊し、大豆畑の際が地割れの被害にも遭ったが、心機一転新たな加工場を作り、味噌の加工品作りに意欲を燃やす。

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 現在、販売しているゆっくり味噌は二種類。大豆と米麹を1:1で仕込んだコクのある深い味わいのものと、大豆と米麹を1:5で仕込み、より甘みを出した白味噌になる。出荷するのは、両方合わせて年間約2トンほど。味噌ももっと増やしたいが、そのためにはさらに広い畑が必要になる。

 「ただ、収量を増やそうと思ったら、連作障害があるので、収量分の倍の畑が必要になる。となると、管理する作業も二倍になってしまうので、これからは味噌を使った加工品を作っていきたい」という裕之さんは、1日も早く味噌の加工場だけでなく、惣菜の加工場も作りたいと意欲を燃やす。
 「例えば、ゆずをくり抜いた中に味噌を詰めたゆずがまとか、味噌汁のかやくになりそうな長ネギなんかを味噌で丸めた味噌玉とか、やっていきたいことは色々あるんですけど、中途半端なことはしたくなくて。せっかく「かげさわ屋」の味噌だからって買ってくださっているお客さんの信頼を裏切りたくないので」という奈緒子さんの言葉を聞いて、裕之さんが言った。

 「早く惣菜加工場を作る許可はもらいたいですが、普段から僕が「新しいことを始めよう」と提案しても、妻が納得するまで大体2年かかるんです。味噌と一緒(笑)。だから、私たちにとって、ゆっくりはキーワードなんです。美味しいものを作るためにも、ゆっくりって必要だと思うし、大切なことだと思うんです」

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[ プロフィール ]影沢裕之(かげさわひろゆき)
1974年神奈川県生まれ。「かげさわ屋」代表。大学卒業後、北海道で林業の仕事に就く。その後、青年海外協力隊としてアフリカで植林活動を行う。帰国後、熊本県・南阿蘇村にて就農。自ら自然栽培で育てた大豆を原料に妻と味噌を作り、販売している。妻と一児の父。

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