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2014.10.24

地の人

自分も、相方の内田も、ここでブログを書いている君津の宮本さんもそうですが、
今、農業をしている地域で育ったわけではなく、別の地域から引っ越してきて農家として生活をしています。

今回は、ヤル気と気合いでどうのこうのではなく、超現実的な話になります。


習慣や人の気質、食べ物や言葉にいたるまで何から何まで、それまで暮らしていた地域とは異なる場所で農家になる。
『水が合わない』と言う言葉がありますが、一言に『水』といってもやはり地域ごとの違いはあります。

それに、まず、農地というのはそう簡単に借りられなかったり用途を変えられませんし、取得もハードルは低くありません。無闇矢鱈に農地が減らないようになってます。

そこに来て地元の先輩農家となると、年功序列やそれぞれのプライドが混じり合い、あーでもないこーでもないと横から口を出したり文句言ってきたりと…農家同士の連携なんて夢のような話です。

しかも、慣行農業でもそれでお金を稼いで暮らしていくのは容易ではないのに、ましてや有機農業ともなると、言葉だけは聞いたことがあっても、実際の姿が分からない人からしたら新興宗教か邪教徒扱いです。まだまだフリーキーな世界で暮らすのが大変というのが実状で、若手農家の置かれる現状なんてのは推して知るべし。
最悪の場合、多大な借金をするか辞めるかしかないわけで、孤立無援の中で歯を食いしばって今にも奥歯が無くなりそうな人も少なくないのです。

じゃあ、全部ぶっ壊さないといけないのか?
そうではありません。生活費の工面というハードルはもちろんどうやっても下がりません、そこは他の自営業者と同じです。
そうではなくて、人。
今の地域と僕の地元の違いは人です。


こちらの方は、隣で畑をされている農家の大先輩です。
有機JAS認証も取得されていて、自治会も同じということもあり、いつもお世話になってます。
本当に感謝しています。

1024yuiomoi

以前にも書いたように、同じ田舎でも今暮らしている地域には移住者もたくさんいて、多種多様な人がいます。
ただ、地(元)の人の感覚として「今までそうしてきたから」とか、活躍の場が取られるとか、やはりいろいろと不安なんだと思います。その不安が反発だったり無関心になってると思うんです。
だから、地の人と上手くやるにも、尊敬して頼りにしている態度で接しないと孤立します。逆の立場ならどうかを考えればいいですね。

で、僕が地元から出た理由としては、単純に保守的な考え方に馴染めなかったからなんです。今となっては、「もう少し地元の友人と色々話して皆んなが良くなる方法を考えていられたら」と思う時もあります。
でも、お互いに努力していくことで、他所者でも地域で居場所が出来るし、お互いに居心地も良くなるし、安心して畑も出来るようになります。これって、どちらかだけが努力してても上手くは行かないと思います。

僕のやる事としては、大前提として野菜を育て、切らさず外に向かって出し続ける。自然と向き合うことが当然となります。
でも、それだけでは農家としては成り立たない。
地の人を敬い、地の人に信頼してもらう。そうやって、お互いにいい方向に向かうような気がしています。

「郷に入っては郷に従え」とは、個人の考え方云々とは別に真理の一側面として上手いこと言ったなという感覚です。
野菜に地のモノがあるように、人にも地の人がある。農家になって改めて気が付きました。

challenger

油井敬史

自由を愛する畑びと
油井敬史(ゆいたかし)
神奈川県 相模原市

1979年宮城県角田市生まれ。
レストランなどの飲食業勤務やアパレルショップの経営を経て、有機農業の会社で二年半の研修を受けた後、昨年9月に就農。

写真家の眼 油井敬史

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