2014.05.08
雨上がりに思うこと
雨上がりの朝。
木々や草葉がたっぷりと水滴をたたえ、
野球グラウンドや山の稜線がボヤけて見えるほど光が反射している。
コーヒー片手にたった一歩、朝日で温む土の上に踏み出すと、
開いたばかりの淡い色をした花が仄かに香り、泥だらけの長靴がくるぶし程まで沈み込む。
蝶が舞い、蜂やハエ、名前も知らない小さな虫も飛び回る。
秋に蒔いた麦は茂り、霜を恐れながら蒔いた種の双葉の間からまた新しい葉が生まれている。
いつもの景色に思わず魅入り、わずか一歩前に進むのにさえずいぶんと長い時間がかかってしまう。少し肌寒い風が吹き抜ける畑を、つがいのキジがのんびりと横切り、ツバメが2羽滑る様に飛んでいって……
ハッと気がつく!
ヤベェ!
青虫対策しなきゃ!
一昨日抜いたのにこんなに草が出て来てる!草も抜かなきゃ!苗を大きな鉢に植え替えしなきゃ!
うわぁ、あっちもこっちも…ああぁ追いつかねぇ~…。
雨上がりの暖かい朝は気持ち良く、芽を出した野菜の成長もめざましい反面、気苦労も増える。
これから冬まで、優雅に朝を迎えるなんてことは、我々には縁のない話なんです。
自由を愛する畑びと
油井敬史(ゆいたかし)
神奈川県 相模原市
1979年宮城県角田市生まれ。
レストランなどの飲食業勤務やアパレルショップの経営を経て、有機農業の会社で二年半の研修を受けた後、昨年9月に就農。