SHARE THE LOVE

2017.12.07

どう売るか、それが問題だ。

気温は下がり、日も短くなってすっかり冬めいてきました。外で作業できる時間も短くなってきたので、年内に今あるニンニクを捌ききるべく、日が暮れてからは屋内で出荷作業を粛々と進めています。

さて今回のテーマは「販路」。

このShare The Love for JAPANのブログは、これから新規就農を考えている方々に特に読んで頂きたいという意向のもと運営されていますが、これから農業を生業としたい方々にとって、「販路」は最も気になるテーマのひとつではないでしょうか。私が新規就農してから現在に至るまで、色々と販路が増えてきましたので、そのご紹介をしたいと思います。

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(2015年以前から2017年11月時点での「販路」拡大の推移)

(1) 2015年以前
まだ私が帰省する前から、父親が農業をしていましたが、出荷先はほぼJAで、お米に関しては個人販売が主という状況でした。

(2) 2016年
私が帰省して就農してすぐの頃は、父親がもともとやっていた農作業を手伝っていましたが、しばらくしてから私単独で、農薬・化学肥料を使わずに栽培を行う専有区画(以下専有区画)を確保し、そこで採れた野菜を個人販売および近所にあるスーパーの直売コーナー(以前のブログで紹介した山口出荷組合の「いこら市場」)に出荷・販売するようになりました。

(3) 2017年
専有区画を増やすにあたり、スーパー1店舗だけでは生産物を全て販売することができないであろうとの予測のもと、「農業総合研究所」「産直市場よってって」といった、生産物を集荷場に持ち込めば、近隣府県のスーパーで販売をしてもらえるという販路の活用をはじめました。これにより「農業総合研究所」経由で約150店舗、「よってって」では約20店舗への出荷が可能になり、すべての生産物を捌くことができるベースの販路網が出来上がりました。
また「Fresh First」というネット通販経由でも販売ができるようにしています。一方で、オーガニックライフスタイルEXPOでのマルシェ出展や情報発信ができるこのShare The Love for JAPANの取組も、また新たな販路開拓にもつながり得る重要なチャネルだと言えます。

これ以外にも、自分でネットショップを立ち上げたり、直接業者と取引をしたりという選択肢もありますが、現状の販路で生産物を十分に捌くことができるので、当面は現状の販路で進めていくつもりです。

ここでこれらの販路の私なりの棲み分けについて、メリット(=【+】)、デメリット(=【-】)を交えてご説明します。

(A) スーパーの直売コーナー ⇒ 少量出荷時に利用
【+】
・最も近場の販路であり、売場の状況や消費者の反応を直に見て取ることができる。
・出荷規格は基本的に自由。
・スーパー側に支払う手数料が低い。
・売上の締めから売上入金までの期間が10日と短い。
【-】
・売れ残りの引取が必要。
・1日で販売される量がそれほど多くないため、効率を求めて大量生産しても、ここだけでは捌くことができない。

(B) 「農業総合研究所」、「産直市場よってって」 ⇒ 大量出荷時に利用
【+】
・集荷場に生産物を持ち込むだけで両社合わせて約170店舗への出荷が可能なので、余すことなく作った分だけ出荷できる。
・出荷規格は基本的に自由。
・売れ残りの引取不要。
【-】
・集荷場から各店舗への輸送コストがかかるため、手取りのパーセンテージは(A)よりも低い。
・委託販売となるため、各店舗のポリシーで値下げ・廃棄などが行われるが、日持ちする生産物でも即日値下げをするなど、農家泣かせの店舗もある。(関連ブログ「選ぶ農家、選ばれる店舗」)
・売上の締めから売上入金までの期間が(A)と比較して長い。

(C) JA ⇒ 大量出荷時に利用
大量出荷時、個人の消費者が店頭では買いづらい生産物の出荷時に活用。
【+】
・出荷した生産物は全て買い取ってくれる。
・売上の締めのサイクルが短く、売上が入金されるまでの期間も短い。
・冬瓜のように、個人の消費者が店頭では買いづらい生産物でも大量に捌くことができる。
【-】
・出荷規格が決まっており、パッケージなどで個人の色を出すことができない。
・相場変動の影響を最も強く受ける。

(D) 個人販売 → リクエストベースで対応。基本的に少量出荷。
【+】
・知人への販売が中心となるので、頂いた感想などを以後の販売にフィードバックし易い。
・もっとも農家の評判が販売に反映される形態なので、品質や対応が良ければ口コミで広がり易い。
【-】
・現在はリクエストベースだが、定期宅配をするとなると、常に複数種類の品種を出荷できる状態にしておく必要があるので、特に端境期の生産物の確保が大変になる可能性がある。

このように、現状の販路を(A)~(D)に分けましたが、生産物の種類や量、売上拡大の方向性によってうまく使い分けていく必要があると思っています。ある程度品種を絞って大量生産し、売れ残りの引取が不要な(B)(C)で収益のベースを保ちながら、一方でいろいろな品種を作付して少量生産し、 (A)(D)で消費者の反応を見ながら捌いていくのが私の思い描いているスタイルです。

農業従事者の高齢化が進み、作り手が減少しながらも、流通やIT技術の進歩で販路の選択肢は確実に増えています。これからの世代の農家にとっては、良いものを作れば作っただけ売れる、そんな時代が来ると思います。

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吉田壮伸

吉田壮伸(よしだたけのぶ)
和歌山県 和歌山市

1981年和歌山県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修了後、大手コンサルタント会社から最新のスマホアプリを扱うベンチャーまで3社のIT関連企業で働く。実家に戻って、2016年就農。農業を体系的に知るため有機農業の学校で学んだ。

写真家の眼 吉田壮伸

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