2017.11.18
明渠は一日にして成らず
10月は和歌山も雨続きで中々作業が捗りませんでした。地域によっては生育中の野菜が完全に水没し、葉物が泥まみれになって品物にならなかった等の被害も出ているようです。自然と対峙するのもまた農業。今回は雨対策の明渠(めいきょ)について書かせて頂きます。
明渠とは、圃場の排水をよくするために地上に設ける排水路のことで、簡単に言うと溝です。うちのような元々水田だった圃場は粘土質で地下に水が抜けにくい土壌になっているので、畝立てをして、落水口(おちみなくち:圃場から水を排水する口)まで溝をつないで排水性を確保します。
(溝を作っていても、長雨で完全に水が溜まってしまったニンニク植え付け前の畑)
野菜によっては、水が溜まった状態で3日も経つと根が酸欠になって枯れてしまったりするので、排水は重要です。ただこの排水のための明渠作り、意外と手間がかかります。
明渠の作り方は以下の通りです。
①トラクターで畝立て後、畝の間に残った土を畝の肩(畝の両端)の部分に寄せる
②圃場の外周部分を掘り、①で整備した畝間の溝、落水口とつなぐ
③排水性を確認する
①②までは一気にやれるのですが、③は実際ある程度まとまった雨が降らないとわかりません。しかも雨が降ると、雨と一緒に表土が流されて折角作った元々の溝の地形が変化して、水の流れが止まる可能性があります。
また、そもそもトラクターは後方に向けて土を掻きだす構造になっているため、耕耘を繰り返すと圃場の外周部分に土が寄っていき、逆に圃場の中央部の土が少なくなってしまい、中央部に水が溜まりやすくなって水が圃場から抜けにくくなるという事情もあります。
最近自動操縦トラクターが出てきていますが、ロータリーの深さ調整を自動で行って、圃場全体の土を水平にならす、あるいは落水口に向かって一定の傾斜をつけることができるようになれば、すごく使い勝手が良いのに、と思ったりします。
話がすこしずれましたが、要するによほどうまく溝を作っておかないと、まとまった雨が降るたびに排水作業に手を取られることになります。
「明渠は一日にして成らず」。もはや土木の分野だと思いますが、例えば鍬1本でメンテナンスコストの低い明渠作りが1発でできたらな、と思う今日この頃です。
(長雨後、水も引きつつあるニンニク畑)
吉田壮伸(よしだたけのぶ)
和歌山県 和歌山市
1981年和歌山県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修了後、大手コンサルタント会社から最新のスマホアプリを扱うベンチャーまで3社のIT関連企業で働く。実家に戻って、2016年就農。農業を体系的に知るため有機農業の学校で学んだ。