2017.08.21
農業技術へのこだわり。
7月29日、30日に行われた、SHARE THE LOVE for JAPAN大一番のイベント、オーガニックライフスタイルEXPOも無事に終了。関わって下さった全ての方に感謝!
今回はEXPO2日目に行われた挑戦者トークセッションについてご紹介したいと思います。
(トークセッションの様子)
挑戦者トークセッションは、SHARE THE LOVE for JAPANの推進する「大地にやさしい農業」をどのように実践しているかについて、今年度の10人の挑戦者がそれぞれ「農業技術へのこだわり。」「母なる大地を次世代へ。」「自然と共に生きる。」というテーマで紹介をしました。ただ、挑戦者ひとりあたりの持ち時間が短かったので、改めてこの場でご紹介させて頂きます。
私は「農業技術へのこだわり。」というテーマで、
(1) 主役は野菜達
(2) 自然の物質循環を尊重
(3) 理論と実作業のバランス
という、心掛けている3つのポイントを挙げました。
(トークセッションの際に使用したボード。挑戦者ひとりひとりが思い思いに自分が掲げるテーマについて思いを書き込んだ。)
(1) 主役は野菜達
「(農家が)野菜を育てる」という、農家が野菜を作り出すかのような言い回しをごく一般的にしますが、私は、主体はあくまで野菜であって、農家は野菜が機嫌よく育つように見守りつつ、収量が上がるように成長の方向性を導いていくものだと捉えています。
水、日光、肥料、風通しなど野菜自身が日々の成長の過程において何を望んでいるのかを汲み取りながら、摘果をして成長させる実を集中させ、野菜に負担を掛け過ぎないようにして長く収穫ができるようにする。人間の手では有機物を1から作り出すことはできません。「見守ることと促すこと」できるのはこれだけかなと思います。
(2) 自然の物質循環を尊重
植物は光合成をして太陽光エネルギーを取り込み成長し、やがて枯れて土に還り、次の世代の糧となる。このサイクルには土壌中の微生物を始めとする生態系の働きも密接に関連しています。本来あるべき生態系を維持し、有機物や肥料、微生物資材を圃場に投入するなどして、その生態系の働きがより活発になるように促していく。突き詰めると(1)と同じかもしれませんね。
(3) 理論と実作業のバランス
理論というのは、植物生理学や土壌学をはじめとする、農業、とりわけ栽培に関連する◯◯学と呼ばれる分野の知識、すなわち原理原則を指します。
インターネットが普及する以前は、書籍や近所の農家やJA等、ごく限られた情報源からしか知識を得ることができなかったため、農業は経験と勘に頼らざるを得なかったと思いますが、今は違います。
書籍はネット検索すれば出ますし、SNSやこのSHARE THE LOVE for JAPANのような取り組みによって、農業の発展、農業技術の普及に熱心な篤農家の方にリーチ出来るチャンスも非常に大きくなっています。ただし、自然界の原理原則が全て解明されて形式知化されているわけではないので、解明されている理論を頭に入れておくだけでは片手落ちです。
解明されている理論が自分の圃場にそのまま当てはまるのかどうか、当てはまらないとすれば何が影響しているのかを仮説検証し、自分なりの栽培スタイルを追求していくのが実作業であると思います。
理論重視で頭でっかちになるのではなく、一方で闇雲に実作業に没頭するわけでもない。両者のバランスをうまくとりながら、栽培技術を磨いていきたいと思っています。
トークセッションでは (1)主役は野菜達 の部分に少し触れただけだったのですが、セッションを聞いて下さっていた方が後でSHARE THE LOVE for JAPANのブースに来て下さいまして、「保育士をやっていますが、“主役は野菜達”というのを聞いて、子供を育てるということにおいても通じる部分がありました。」と仰ってました。
野菜も子供もあくまで成長の主体は自分自身。正しいと思われる方向に成長できるように、道を間違えないように見守り、成長を促す。育てるってそういうことなのかもしれませんね。
(EXPO販売ブースにて、収穫最盛期の冬瓜と。)
吉田壮伸(よしだたけのぶ)
和歌山県 和歌山市
1981年和歌山県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修了後、大手コンサルタント会社から最新のスマホアプリを扱うベンチャーまで3社のIT関連企業で働く。実家に戻って、2016年就農。農業を体系的に知るため有機農業の学校で学んだ。