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2017.08.01

選ぶ農家、選ばれる店舗

これまでの記事でも紹介してきましたが、私は昨年から今年にかけてニンニクを大量に栽培しました。10aの作付けで、乾燥前のニンニクの収量は1tが目安と言われていますが、8aの作付けで約930kgの収量があったので、初挑戦の結果としては上々だと思います。

昨年までは、作った野菜は近所のスーパーの直売コーナーに出荷していましたが、さすがに数百キロ単位のニンニクを捌くことはできないので、今年から「野菜の価格・販売量・販売する店舗を農家自身で決定できる」という直売所を運営する企業にお世話になって出荷をしています。

目標としては、
・常時100店舗に在庫を置く。在庫補充(出荷)は週2回ペース。
・在庫がある店舗のうち30〜50%の店舗で売上が上がるような価格設定。
・6月後半〜12月末までの6ヶ月半で月平均1000〜1500点を売り上げる。
といった感じです。

ニンニクは1個入りだけでなく、サイズが小さければ複数個を販売用のニンニクネットに入れるケースもあるので、1,000〜1,500点だと実際のニンニクの個数は1,200〜1,800個程度になり、年内に約10,000個のニンニクを捌く計算になります。

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(ネットに入れ、出荷できる状態になっているニンニク)

そこで出荷先の各店舗について、
(1) 出荷個数
(2) 売上個数
(3) 廃棄個数(一定期間売れなかった場合は廃棄扱い)
(4) 在庫個数
を一元管理する表を作り、日々の状況を追いかけていくことにしました。

表を作る狙いとしては以下の3つです。
(A)消費者に買ってもらえる値段を探る
(B)各店舗の適正在庫を把握する
(C)各店舗の特性を把握する

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(実際に作った表。売場IDとは出荷先の店舗のこと。最初は値段設定が悪く売上が伸びなかったが、値段設定を見直したお陰で売上が上がるようになってきた。)

(A)については1ヶ月ぐらいで大体掴めてきました。同じ値段でも店舗によって売上は違ってきますが、飛ぶように売れる金額だと利益の最大化はできないので、“売れるけど売れすぎない”というラインを意識して価格を設定しています。

(B)については、(A)の値段設定をした上で、店頭在庫がある日にどれだけ売れたかで目星がついてきます。

そして(C)。同じ系列のスーパーであっても店舗毎に値引きの仕方にかなり違いがあり、大きく3つのタイプに分かれることがわかってきました。
タイプ1:値引きをせずに売り場に置き続けてくれる店舗
タイプ2:一定日数経過後に値引きをする店舗
タイプ3:初日or2日目にいきなり値引きをする店舗

タイプ1、2は、農家の値段設定を尊重してくれている店舗だと言えます。
問題はタイプ3。
値段設定は各店舗共通で、ペースは違えどどの店舗でも売上は上がっているので、少なくとも適正価格を大きく外してはいないはずですが、長期間店舗に置けるニンニクであってもいきなり半額値引きをしてきたりします。

先日、先輩挑戦者であり、現在開拓者の大野收一郎さんの圃場に、先駆者の山下一穂さんがいらっしゃった、関西のSHARE THE LOVE for JAPANの参加農家が集まった勉強会の際、山下さんは懇親会でこう仰ってました。
「私が好意にしている出荷先がある。その会社の代表の方は、消費者だけでなく、商品を出荷してくれる農家もまた大事なお客様であるといつも仰っている。」
農家が気持ち良く出荷し、店舗が気持ち良く売り場を提供し、消費者が気持ち良く購入する。3者がWin-Win-Winの関係になることを常に目指されているのだと、私は解釈しました。

「いつも新鮮な野菜を店頭に並べたいから確実に売れる値段にしたい」、「他に低価格の競合商品がある」、「売れ残るぐらいなら半額にでもして売った方が良い」等、すぐに値引きをする店舗について、考えられる理由は色々とあります。ただ、農家の立場としてはないがしろにされている印象が強く、いきなり半額にされるぐらいなら他の店舗に出荷しようという流れになるのは当然で、今後はタイプ3の店舗は農家から選ばれなくなると思います。実際、私はタイプ3の店舗への出荷を止めています。

JAが主たる出荷先だった時代は終わり、ITや流通の進歩により、農家側も多様な販売チャネルを使えるようになりました。「農家は出荷先である店舗を選び、店舗は農家に選ばれる立場である」という構図が生まれつつある、と私は思います。

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吉田壮伸

吉田壮伸(よしだたけのぶ)
和歌山県 和歌山市

1981年和歌山県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修了後、大手コンサルタント会社から最新のスマホアプリを扱うベンチャーまで3社のIT関連企業で働く。実家に戻って、2016年就農。農業を体系的に知るため有機農業の学校で学んだ。

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