2017.05.03
原産地に想いを馳せて
4月に入り、夏野菜の準備や植え付け作業で忙しくなってきました。
ナス、ミニトマト、ピーマン、トウガラシ、ズッキーニ、オクラ、ジャガイモなど、
今年の春夏は30種類程度の野菜を栽培します。
作業効率や収益性を考えるともっと種類を絞った方が良いかなとも思いつつ、
色々と手広くやりたいタイプなので少量多品種で当面は進めていきます。
(自宅の庭の一部を育苗スペースに。ズッキーニ、サニーレタス等を育苗中。)
(昨年10月に植え付けした初挑戦中のニンニク畑。雨ニモマケズ草ニモマケズ。)
(2月下旬に植え付けたジャガイモ「キタアカリ」。欠株ゼロ!)
さて、タイトルの「原産地に想いを馳せて」ですが、なるほど!と思った話をひとつ。
野菜にはそれぞれ原産地があります。
例えば、トマトは南アメリカのアンデス地方、ナスはインドが原産地だと言われています。栽培する際は原産地の特性を考えると良いと言われますが、なぜかというと、野菜は自分がどんな環境で育ってきたかを覚えていて、原産地から遠く離れた日本でも、育ってきた環境に近くなれば野菜の種子は発芽を始めてくれるからです。
では、種子はどうやって環境を知ることができるのか。ひとつ例を挙げると、種子のカラ(果皮)に発芽抑制物質が含まれている野菜があります。代表的なのはホウレンソウやゴボウでしょうか。これらは種子をそのまま土に蒔いても発芽率が低いため、1日水につけるなどして、発芽抑制物質を洗い流す「催芽(さいが)処理」を行うと発芽が揃いやすくなります。
なぜ発芽抑制物質などという一見厄介そうなものを身にまとっているのか。どうやら、この発芽抑制物質が洗い流されるほど水分が豊富な環境でないと育つことができない、と種子自身が判断しているようです。種子は一度発芽してしまうと生育を止められない。なので発芽しても良い条件を種子自身が判断できるような構造になっているのです。「合理的にできているな」と感心しました。
種子自身が、「生育するのに適した環境・生育してきた環境=原産地」を見極める術を長い年月をかけて受け継ぎ、生まれ故郷である原産地に想いを馳せてきたのではと思うと、より生育に適した環境を作ってあげて、野菜に気持ち良く育ってもらわねばと思いますね。
(催芽処理をして発芽が揃ったホウレンソウ)
吉田壮伸(よしだたけのぶ)
和歌山県 和歌山市
1981年和歌山県生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科修了後、大手コンサルタント会社から最新のスマホアプリを扱うベンチャーまで3社のIT関連企業で働く。実家に戻って、2016年就農。農業を体系的に知るため有機農業の学校で学んだ。