2017.11.15
雨のち晴れ
今年も時期違わず、お米が花を咲かせ、たわわに稔ってくれた。本当に自然の恵みに感謝しかない時期だ。以前、奈良と三重の県境にある、自然農を実践しながら学ぶ「赤目自然塾」に通っていた時、代表の川口由一さんが、「お米はイネ科の草の中で一番強く、固い」とおっしゃっていたのを思い出す。
周りの田より草が多い僕の田んぼでは、収量こそ少なめだが、病気どこ吹く風と言わんばかりに、元気な稲が風になびいている。草に背を追い越された稲は追いつけ追い越せと言わんばかりに背が伸び、それでもの1、2本植えのお米は自身の分蘗(ぶんけつ)でV字型に広がっており、起き上がり小法師のように倒れにくい。
(しっかりと分蘖した稲)
今年は、奈良では雨も台風もなく、順調!?に稲刈りまで来たはずだったが、一枚目の田んぼを刈った翌日から雨が1週間続き、稲刈りが出来ない中、10月半ばに台風が来た。稲穂がたわわな状態で風に煽られたあげく、約半日もの間水の中に潜ってしまった田んぼもあった。警報が出て心配で見に行ったが、うちの田より50cm以上高い所にある田んぼでやっと穂だけが顔を出している状態。思わず水をかき分けて自分の田まで行きたい衝動に駆られたが、辺り一面暗い湖のようだった。稲の生命力を頼りに、期待と不安が入り交じった夜だった。
(水の中に潜ってしまった稲)
朝には一転、晴れ間だ!田んぼに駆けつけた。無事だ!
何事もなかったように元気になびいている。お米は強い。再認識させられる出来事だった。
(台風翌日の田んぼの様子)
その後、遅れを取り戻すかのような稲刈り!一気に刈り上げた。天気も味方してくれ、天日干しの米が6日間で完全に乾燥を終えてしまうほどに晴れ上がった!
(一気に進めた稲刈り)
こういう天気は好きだ。雨があり、晴がある。今回の雨続き後の台風で、水没はないものの出荷停止に追い込まれた野菜だが、次の晴へ向けた仕切り直しに良い機会だ。雨の時には無理をせず、晴になったら一気に動く。晴耕雨読、しみじみくる言葉だ。
東樋口正邦(とうひぐちまさくに)
奈良県 平群町
1981年奈良県生まれ。京都大学理学部で宇宙物理学を学ぶ。高知の山下農園で3年間研修し農場長を務めた後、2015年に奈良の実家に帰って就農。妻と自分の愛称を冠した「eminini organic farm」では「畑から虹を」をモットーとしている。