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2019.12.02

品目を増やすということについて(3)続けられる農業をするために

前回の記事ではマコモダケについて書きましたが、今回はもう一つ新しい品目として栽培を始めた、クレソンについても触れたいと思います。

農業大学校(AIC)に通っていた時の恩師に、私の地域の特徴を話した際に、栽培を勧められた作物がクレソンでした。クレソンという作物自体その頃はよく知りませんでしたが、「とにかく一度やってみよう」と、昨年試作を行い、今年は圃場をより栽培条件の良い場所に移して栽培を行うことにしました。

最初は、実際にクレソンを栽培されている方のところへ見学に行き、見よう見まねでスタートしました。一般的な野菜ではない為、近くに栽培方法を聞ける方はいません。実際にやってみることで段々と何がよくて何が悪いのかを知っていきました。

新規就農者は特に、技術力という点では既存の農家どころか近所のお年寄りにも到底敵いません(そもそもお年寄りの方はその道何十年のベテランですし…)。
何もないところから一歩を始める為には、向いている場所で向いているものを栽培することが、技術力を持った周りの生産者と勝負するための一つの方法かと思います。

私が品目を選ぶ際に、栽培に関して基準にしているのは以下のことです。
・小さく始められる
・土地に合う(栽培条件が良い)
・低コストで栽培できる
これに加え、私の場合は獣害や雪害を考慮して、品目を選んでいます。

大切にしているのは続けられる農業をすることです。

条件に合っていても自分の選んだ品目が本当に合うか合わないかは、結局実際に栽培して販売してみなければわかりません。今は、「小さくやってダメなら次」「いけそうならもう少し大きく」と地道に良いものを探しています。不器用な方法かもしれませんが、農業は繋がっているので、ダメだったことでもやった経験として自分の身についていきます。それは私にとって時間の無駄ではなく嬉しいことで、またどこかで私を助けてくれるのではないかと思います。手を出してすぐにやめることは、周りからは良い顔をされないかもしれませんが、地域に迷惑をかけたり、自分の経営に大きな負担になるようでなければ、試行錯誤して答えを出せばいいと思います。

2年ほどそうやってゴチャゴチャとやったお陰で、今年はようやく何品目かに絞れる段階になってきました。
少しずつ、形になっていけばいい。何もない分、いろいろなことを試せるのは新規就農者の良い点であり、農業の楽しみの一つだと思います。

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(クレソン栽培の圃場づくり。前作では水量が確保できず水管理に苦戦したことを考慮し、谷川が隣接する圃場で、直接山水を引けるようパイプを通し、水量を増やす工夫をしました)

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(穴はユンボで掘り、川の流れを圃場内に作ることで、自然に自生するクレソンの環境に近づけています)

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(生育中のクレソン)

余談ですが、今年使えるようになってよかったものNO.1がユンボです。重機って素晴らしくて、本当に、ひたすら強い。人間は非力です。自分を疲れさせない為にも、怖がらずに頼れるもの、便利なものは全力で取り入れていこうという思いになりました。

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田中真由美

田中真由美(たなかまゆみ)
くさおか農園
滋賀県 長浜市

1994年滋賀県生まれ。40年前から、化学肥料不使用で「人に喜ばれる米作り」を行なっている祖父の姿に憧れ、2017年に兼業農家として就農。土地を守りながら地域の中に「当たり前に存在し続ける農家」を目指し、2019年からは専業農家として、祖父に米作りを学びながら、豊かな水を活用した作物栽培にも挑戦する。

写真家の眼 田中 真由美

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