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2019.10.21

「今いるお客様」に喜ばれる米を育てたい

今回は、稲刈りでの失敗続きでへこんでいた私の心を癒してくれた、米の出荷の際の嬉しかったお話です。

現在私のお客様は、祖父の代から長く付き合いのある常連の方がほとんどで、中には祖父が今の栽培方法に切り替えた40年前から、ずっと買い続けてくださっているお客様もおられます。

今年は栽培のメインが祖父から私になり、初めて自分の名前でお米を販売しました。
しかし前回のブログに書いたように、今年は天候不順に加え私の力不足の為に、例年通りの品質に届くことができませんでした。そのため、お届けする際にお客様に謝り、「値段を下げてお渡しさせていただきます」と話をさせていただきました。

その際、遠方からいつも足を運んでくださるお客様からは、
「若いんだからこれからですよ。うちの家の者はここのお米で育ててもらったから皆健康です。孫の代までお願いしますから、頼みますよ。」と、断っても例年通りの代金を支払おうとしてくださり、
年配の常連さん達からは、「岩三さん(祖父の名前)の米は本当に美味しくてね、うちの人は岩三さんの米じゃないとあかんっていつも言うてましたよ。頑張ってね。私が死ぬまで作ってね、あはは」という言葉をかけてくださったり、
「子供に送るんですけど、ここの米を送ってと言われて、こっちはすぐになくなってしまうんです。」という話も聞かせていただきました。
そして、「これからなんやから大丈夫よ」と逆にお客様に励ましていたただき、「ありがたいなあ」と、元気をもらいました。

経営という面でみれば、今のお客様は高齢の方々も多く、今後は消費も減って、新規開拓が必要となってくることは明らかですが(実際に去年配達した時にはご健在だった方が今年行くと亡くなられている家もありました)、今私が向き合うべきなのは、先の話ではなくて、「この方達に喜んでもらえるお米を育てられるようになることなんだな」と思いました。

「誰のために」がはっきりしている時の栽培の心持ちはやっぱり違います。価値を認めて求めてくださるお客様がいてくれて、その方たちの為に仕事ができるというのは、幸せなことです。

「専業農家として生計を立てなければ」というところから、「もっと何かをしなくてはいけない」という思いが先立ち、焦っていたようです。でもそうじゃなくて、「今あるものに向き合って、一つ一つできることを増やしていくことが、私が今やるべきことで、大事なことなんだな」と思いました。

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(出荷するお米。1袋30㎏は重いので、一人暮らしの方の家などは小分けにして配送を頼まれることもあります)

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田中真由美

田中真由美(たなかまゆみ)
くさおか農園
滋賀県 長浜市

1994年滋賀県生まれ。40年前から、化学肥料不使用で「人に喜ばれる米作り」を行なっている祖父の姿に憧れ、2017年に兼業農家として就農。土地を守りながら地域の中に「当たり前に存在し続ける農家」を目指し、2019年からは専業農家として、祖父に米作りを学びながら、豊かな水を活用した作物栽培にも挑戦する。

写真家の眼 田中 真由美

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