2019.09.29
段取りが米の品質に直結する理由 ~無駄のない美しい動きの裏にあるもの〜
前回の稲刈りの話の続きになります。
初日こそひどいものでしたが、お天道様に助けられ、無事に大方の収穫作業を終えることができました。
(一番早く収穫した品種、コシヒカリの穂)
今回苦戦した地面が乾かなかった原因としては、
・中干し(7月頭に溝を切り田を乾かす作業)が上手くいかなかった
・夏場(8月中旬)に畦際に溝を掘るタイミングが遅れた
という2点が大きく影響しました。
さらにこの2回の溝切りが甘かった為、元から水が停滞していた場所は特に地面がゆるくなり、祖父の代では倒したことのない稲を、一度の台風で倒伏させてしまうという失敗が続きました。
「昨年の大型台風が直撃しても立っていたのに」と、倒伏させてしまった田を見た時には本当にショックを受けました。
これらの失敗の大もとの原因は、春の「代掻き」が均一にできていなかったことです。
田面が均一でないから水のたまる場所ができ、溝を切ってもうまく水が流れず、深くない田でも水が停滞して乾かなかったのです。
これは私が「代掻き」という作業を甘く見ていた結果です。
祖父から、田んぼの作業の中で「一番大事なのはしるし(代掻き)や」、と教えられていたにも関わらず。
稲を倒せば泥が入り、石が混ざります。深いところで無理にコンバインを走らせれば、機械も壊れるし田んぼも荒れます。機械が入れず収穫が遅れれば適期を逃し、倒れた稲が水に浸かって芽が出てしまえば、それはもう商品にはなりません。
お米の収穫~調整作業は、間に様々な工程があり、それらがスムーズにいくか否かで、米の品質は大きく変わります。
「作業を効率よく、美しく進められることは、品質にこだわった美味しい米作りの為に、こんなにも大切なことなのだ」と強く思いました。
そのためには、翌年の秋の収穫をイメージしてこの秋から段取りを組み、管理を徹底させることが欠かせないのだとも。
原因を考えてみれば、全部自分のやった結果が秋に返ってきているだけなんですよね。
やったらやっただけ、やらなければやらなかっただけの結果が返ってくる。自然はシビアで正直です。
「1年生なんやから、毎年勉強や。最初からおっしょさん(お師匠さん)はおらん。」
祖父にそう言われ、それでも、すごく悔しかったです。
自分の至らなさをはっきり突きつけられた秋でした。
田んぼは1年に1度しかできません。毎年学んでいかなければ10年たってもひよこのままです。
「来年の秋は、一切長靴を泥で汚すことなく、収穫作業を終えられるようにするぞ~!」と、ドロドロの田んぼ靴を洗いながらしみじみ決意です。
田中真由美(たなかまゆみ)
くさおか農園
滋賀県 長浜市
1994年滋賀県生まれ。40年前から、化学肥料不使用で「人に喜ばれる米作り」を行なっている祖父の姿に憧れ、2017年に兼業農家として就農。土地を守りながら地域の中に「当たり前に存在し続ける農家」を目指し、2019年からは専業農家として、祖父に米作りを学びながら、豊かな水を活用した作物栽培にも挑戦する。