SHARE THE LOVE

2022.12.14

風の人 土の人

その日の北海道長沼町の最低気温は10度を超え、11月末としては異例の暖かな朝、東京へ向かう飛行機へ乗り込みました。11/26、27に代官山T-SITE で開催された「大地のマルシェ」に参加、千葉や東京に住んでいたころの懐かしい友人にもたくさん再会でき、またSTL参加農家さんやスタッフさんとのたくさんの出会いがありました。

普段“土の人”として畑を耕す僕が、“風の人”となり新たな風土と出会いに行く貴重なチャンスということもあり、滞在期間を延長し、気になっていた千葉県鴨川市の「鴨川自然王国」、「小さな地球」を訪ねることにしました。

鴨川自然王国は、歌手の加藤登紀子さんのご主人、藤本敏夫さんが田舎の暮らしの中から本質的な幸福とは何かを見出そうとした、有機農業の聖地のような場所。現在は次女で半農半歌手であるyaeさんがご家族で農的暮らしを営んでいます。

小さな地球は、30年前に移住した林良樹さんが集落の長老たちから農村の暮らしのすべてを学び、2019年の台風で被災し集落に3軒の空き家ができたことをきっかけにスタートした農村の再生プロジェクトです。

車一台がやっと通れるほどの山道をじりじりと登った先に現れる、茅葺き屋根の集落と棚田の風景に感動しつつ、yaeさんや良樹さんの話に耳を傾け、お二人とも移住者でありながらその土地に根をおろし、その土地を心から大切に扱っていることに感動を覚えました。

tamaki17-1

窓から見える人と自然の千年の営みが創り出した里山の美しい風景に感激し、古民家の裏山を歩けば、もとの環境を損なうことなく、とても歩きやすくつけられた山道があり、先人の智慧と卓越した美意識を目の当たりにできた喜びをかみしめていました。

tamaki17-2

それでも良樹さんが来た30年前には集落の人たちはその土地での暮らしに誇りや自信を持つことができず、「なぜここに来た?こんなところに来ちゃダメだ!都会へ出ろ」と言われたそうです。それでも真摯に村の文化や自然と向き合う姿を見て、まず長老たちが良樹さんの存在を受け入れて、今では彼らの教えを最もよく引き継ぐリーダー的存在となっています。

サハラ砂漠の美しさ、そこに暮らすひとの気高さを見出したのがよそものであるサン・テグジュペリだったように、アラスカの自然や先住民の智慧を誰よりも体現したのが星野道夫だったように、自らを美しいと知らずに咲く野の花のような里山での暮らしを営む人びとに光を見出したのが、藤本さんや良樹さんのような風の人であり、今では彼らのような存在が中心となって古くて新しい、懐かしい未来を創造しようとしているところに、僕の住む長沼を重ねて見ていました。

風の人と土の人が混ざりあい、風土がうまれる。
そんなことを思いながら北海道への飛行機へ乗り込みました。


農と蔵たなどぅい
Facebook @農と蔵たなどぅい
Instagram @noutokura_tanadui

challenger

玉城聡将

玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町

1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。

過去の記事を読む

2022 挑戦者

BACK TO TOP