2022.09.14
オソイホドハヤイ
9月に入り、日中は暖かな陽気に包まれるものの朝晩の肌寒さ、遠くに望む羊蹄山や樽前山の姿に秋を感じるようになりました。これから先日刈り取った古代小麦の播種や脱穀などなど盛りだくさんな季節となりそうです。
7月下旬に小麦を刈り取り、天日干しをした後は大雨や日照不足の難しい条件で乾燥が一向に進まず、穂のついたまま発芽してしまったりと、近代的な穀物乾燥機に頼らない方法で実際に行う上での難しさを身をもって体験しています。これらの作業は現代であれば収穫・脱穀・風選まではコンバインで一気に処理され、籾は施設で電気乾燥されるので作業時間は大幅に短縮されます。スゴイ!!
しかし一見効率化されたように見えるこれらの工程も、その縁の下では化石燃料や膨大な電力によって支えられており、これらを供給するグローバルに巨大化されたシステムの上でこそ成り立っているということを捉えておくことも必要なことかもしれません。
古い道具は時間がかかるように見えて、実際には身の回りにある素材で製造、修理ができて、動力も収穫物をエネルギー源として動く人力で、しかも全然力がいらない、ローカルで非常に効率的なエネルギー循環で成り立っているといえます。
(永い時間使われてこなかった足踏み式脱穀機や唐箕など、古い道具も実際に使ってみると驚くほどよくできている)
僕たちの行う昔ながらの手仕事は一見すると非効率なように思われるかもしれません。しかしそこには自然界の理(ことわり)にならった方法論があり、科学技術の発展した現代の視点から見ても非常に優れた智慧がいくつも隠されています。
合理化を叫ぶまえに、その「理」とは何か、まずしっかりと考えることが必要ではないでしょうか。現代的な方法論とともに、失われた昔ながらの視点や洞察、思想の中から謙虚に学び取ること。
ミヒャエル・エンデの小説「モモ」のテーマであるじっくりと時間をかけることの大切さを、もっと見直すべき時がきている気がしています。
農と蔵たなどぅい
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玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町
1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。