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2022.08.24

川は生きている

お盆を過ぎると、北海道の季節はその歩みの向く先を秋へと変え、朝夕の涼しさも心地よく感じられます。それにしても今年の夏は大雨が多く、真夏でも気温が上がらずに少し肩すかしを食らったような感じがしています。

先日、町役場から一本の電話があり、何かと思うと、所有している畑の脇を流れる小川をコンクリートで3面護岸するから工事させて欲しいのだが、河川の土地が登記上僕の所有になっているので、買収させて欲しいという話でした。というのも近年の集中豪雨などで氾濫の危険があるため、コンクリート護岸することで流速を早めて排水性を向上させたいというお話で、今までも氾濫して畑が水没したことがあるとのことでした。

僕としては急な話しですぐには返事できないが、まだ辛うじて生きている川の流れを固めてしまうことで、その土地一帯の息付きを損なってしまうような工事、これから先の世代に残す風景を変えるようなことを安易に推し進めて良いのかどうか、慎重に考えていく必要があることをお伝えしました。

その小川には、「ピンネ」というアイヌ語で「雄」という意味の名前がついているので、かつては先住民の暮らしに恵みをもたらす清らかな流れであったことが想像されますが、現在の姿は、上流も下流も既に護岸工事によってコンクリート化され、素掘りのまま残されているのはこの畑の脇部分だけとなっています。5月に亡くなってしまったこの土地の先代の幼少期には、この小川でよく遊んだり洗濯をしたものだったそうですが、今では往年の面影を見つけることも難しくなっています。

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(両側を護岸された小川、「ピンネ」。大雨の日に普段の数倍の水位に。川床に堆積した有機物にとりついた植生が流れをS字に緩めることで土地を涵養(かんよう)している)

川というのはそもそも、その流れによって土地を涵養し、生き物を育み、氾濫することによって上流の森からの養分を流域にもたらす有機的な存在で、排水性のみに着眼したコンクリート水路とは全く異なる機能を持つ存在であって、生きた川が存在すること自体の価値を、もっと見直さなければならないと感じています。

近年、周りの土地でも先人達があえて残してきた防風林を伐採してバイオマス発電業者に売ったり、溜池を埋め立てて畑にしたり、何十台もの重機を使った区画整理など、その土地、地形、風景や土中環境、生態系を無視した大規模な施業が至るところで目につきます。

自然を畏れ敬い、恵みに感謝し、先人の智慧に学び後世に託すといった精神性を大切にすることは、農民や漁民、山の民には当たり前であり、こういった精神性が一次産業従事者からも失われかけていることへの危機感は募りますが、それでもまだ残されているものを大切に守り継いでいくとともに、失われたものも少しでも取り戻していきたい。あらためてそんなことを思いました。

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(同じ日に撮影。2辺をU字溝で固められたことでかえって水が抜けない状態の畑)

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(素掘りのままのすぐ隣の畑は全く水が溜まっていない。傍に生えている木々も余分な水分を吸い上げて発散することで土中の環境を保つ)


農と蔵たなどぅい
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玉城聡将

玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町

1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。

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