2022.07.28
野の灯台
7月も半ば、小麦が黄金色に色付き、そろそろ刈り入れ時かなとなんとなくそわそわしています。
そんななか、耕作放棄され薮だった畑に植えた自然栽培トマトは、初収穫を迎えるとほぼ同時に暑さの影響もあってか一斉に完熟となり、まだ充分に出荷先が確保されていないために豊作なのはいいけど売り先がないという事態に陥ってしまいました。
急遽SNSで購入希望者を募ってみると、夜中でもすぐに反応してくれたり、友人に呼びかけてくれて10kg単位で買ってくれたり、レストランで使うために30kgも仕入れてくださる方、畑に直接足を運んで来てくださる方など、多くの人に手を差し伸べてもらえて本当に助かったと同時に、いい人たちに囲まれて自分たちは幸せ者だと心から思いました。STLのスタッフの方もすぐにサポートしてくださりとても感謝しています。
今年は野菜を販売するという農家としてごく当たり前な行為に初めて挑戦するということもあり、値段の付け方など色々悩みながらやっています。それと同時により明確に見えてきたことは、自分たちは野菜を売って生計を立てたいわけではなく、農業を通じて自然の営みのなかで生かされていることを日々実感しながら、そこで受け取ったメッセージを届けることがしたいのだということでした。
日々自然と対話し、自然の正直な反応を受け取る農家は、人が人として自然界での立ち位置を見失わずにいるための光としての、言葉を発する灯台のような存在であるような気がするのです。
農と蔵たなどぅい
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玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町
1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。