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2022.05.23

それぞれの時の川を生きる

5月も半ばになり、北海道長沼周辺の山々に育つ樹々はうす緑の新葉をひらくものもあれば、黄色や赤茶色の花を咲かせたりと、紅葉さながらのさまざまな色合いを見せ始めています。

畑では去年の秋に、拓いたばかりの土地に手で蒔いた古代小麦、「スペルト」「アリーナ」「南部」が目覚ましい成長を見せてくれています。うちの畑のなかでも特に作土層が浅く見えた場所に無肥料で育てているにもかかわらず、周囲の慣行栽培の小麦畑にも引けを取らない生育ぶりに、古い品種の持つ力強さを感じます。この小麦を使って今年の冬には醤油が醸せるでしょうか。

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前回のブログで書いた、霜に当たってしまったトマトもその後回復の兆しを見せています。実が採れ始めるのはその分遅れますが、それは人間の都合。早く植えてしまった反省もありますが、改めて、季節や植物の持っているペースと人間として刻む時間が極力寄り添っていけるようにチューニングしていきたいです。

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こうして植物を通して季節の移ろいや、時の流れを感じながら日々を過ごしていると、今まで当たり前だった、時計の針が常に一定に刻む時間に縛られた生活というのが、だんだんあまり意味がないように思えてくるようになりました。いまこうしている間にも、冬あんなに眠っているように見えた草木はどんどん活発に光合成をして日毎に目覚ましい成長をしていて、さらにその間にも微生物の世界では、幾世代にもわたって生まれて死んでを繰り返しています。

植物の世話をするのも醤油を醸すことも、それぞれ違った時のリズムを持った川の流れに飛び込んでいくようなものという気がします。そこで無理矢理人間のリズムを押し通そうともがいても、結局は押し流されてしまう。流れに身を任せ、水と一体になるような感覚で生きることができれば、いつか大海原で魚のように自由に呼吸ができるようになるのかもしれません。そして自分自身もまた、生まれ持った川の流れを素直に生きることができるのではないかと思うのです。


農と蔵たなどぅい
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玉城聡将

玉城聡将(たまきあきまさ)
農と蔵 たなどぅい
北海道 長沼町

1992年愛知県生まれ。和の料理人を経て、義父が営農する北海道へ居を移す。2022年4月、「農と蔵 たなどぅい」を開業。夏は野菜を育て、冬は蔵人として醤油を仕込む。土壌や微生物、小動物相を豊かにすることで、植物が持つ本来の生命力を発揮できる手助けをし、「種取り」をすることで栽培種の多様性保全も視野に入れる。「常に自然を師匠として学び、授かったものは与えるためにある」という信念の下、「土地に仕える者」として仕事に取り組む。

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