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2016.09.20

天候との付き合い方

こんにちは。滋賀県高島市 みのり農園 高橋です。

先日、台風で東北・北海道が大きな被害を受けました。
私がまだ学生だった頃、北海道には台風が来ないと授業で習ったように記憶しています。
年々台風や大雨といった天候による被害が昔とは変わってきているように感じます。

農業は天候に大きく左右されるということは皆さまが考える通りです。
みのり農園を開園した2013年には、当初導入された特別警報が発表されるくらいの大型台風の被害を受けました。自然薯の支柱は風で折れてしまい、完全に倒れてしまいました。畑はすべて田んぼのように水が溜まってしまい、数日たっても水が抜けず、畑の作物は根っこがやられてしまい腐ってしまいました。撒いたばかりの人参は半分が水没、残った畝も水流で崩れてしまい、散々な結果になりました。

今年は幸いにも今のところ台風被害は受けていませんが、2014、2015年とも、水没や支柱の破損など、被害の強弱はあるものの台風被害を受けています。

また、毎年7月・8月のどちらかが1か月間雨続きで、どちらかが1か月間晴れ続きという気候を繰り返しています。よく、畑に水をやりますか?と聞かれますが、基本的には土には保水機能があるため、水をやることはありません。ただ、1か月間雨の降らない真夏には水をやります。作物を植える前のマルチをはるとき、水を一日中まいてからマルチを張ります。そして、苗の定植時や種まきをしたときにも、果菜類にも水をやります。今年も8月の暑い時期に1か月間雨が降らなかったため、毎日水やりに時間が割かれていました。8月後半は、畑の土が砂漠のように乾いてしまい、水やりも追いつかず、定植した苗をだめにしてしまうこともありました。ただ、水をまくという対処法があるため、雨が多いよりはまだましなのかな、と思います。


逆に、雨が多い時期。作業内容が非常に制限されてしまいます。基本的に土に水分が多すぎるときの耕運は土をこねてしまい、細かくするのではなく固まりにしてしまうため、耕運ができなくなります。そして畑に入るだけで土を固めてしまうため、本来は雨の日に畑の中に入ることは好ましくありません。畑への種まき、定植も雨の時は非常にやりにくいため、よほどの時以外は行わないようにしています。みのり農園では9割以上の種まきは一度苗を作ってからの定植にしているため、畑の準備・種まき時期に関しては天候リスクを抑えられるようにしています。

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(ホースにスプリンクラーをつけて水を撒いている様子)

そして、大雨の時。少し専門的な話になりますが、みのり農園の土壌は黒ボク土といわれる、水はけのよい土になります。ただ、30センチぐらいの深さに粘土層があり、年に数回の大雨の際は水が抜けないことがあります。イメージとしてはコンクリ―トの上にスポンジが乗っているところに水をいれるところを想像してください。ある程度まで、水はスポンジが吸ってくれますが、スポンジの許容量を超えると水があふれますよね。大雨の時にはそんな感じで水があふれてしまいます。そして周りの高台からも水が流れ込んでくるため、畑の水がなかなか抜けません。畑の水が抜けないと、作物の根っこが呼吸できずどんどん傷んでしまいます。そんな時は、大雨を含んで重たくなった土を鍬でかき、溝を作ります。溝を掘って排水溝に流れるようにして、一刻も早く水を抜けるようにします。これがかなりの重労働なので、最近は台風が近づいてくるとしった段階で、出荷を止めて、畝間に管理機を走らせて溝を掘っておくようにしています。来年には○十万円を投資して、高畝成形機を購入して省力化を図る予定です。

農業には天候リスクはありますが、ある程度までは人間の力で対処できます。最終的には、大きな自然の力には敵わないため、いい意味での諦めも必要だと思っています。考えうる限りの対処をしてダメだった場合には、仕方ないので気持ちを切り替えて次につなげていく姿勢が必要だと思います。

2016年の挑戦者のみなさん

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高橋佳奈

高橋佳奈(たかはしかな)
滋賀県 高島市

1979年 滋賀県生まれ。東京でベンチャーキャピタル系の企業に勤務。その企業が立ち上げた農業法人で3年間農業に従事した後、料理人だった夫とともに就農を決意。郷里に近い滋賀県内にて2013年に就農、『みのり農園』をスタート。現在は、収穫したばかりの野菜を提供するレストランのオープンに向けても奮闘中。『農業女子プロジェクト』にも参加し、若手農家との連携も図っている。

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