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2018.06.13

せん孔細菌病

桃を栽培していく際、当然病害虫のリスクがあります。桃が罹患する病気で最大の敵が、せん孔細菌病です。

この病気が今年は例年以上に福島で蔓延しています。この病気は名前の通り、細菌という目に見えない敵による病気です。4月に入り気温が上昇すると細菌が増殖を始め、枝に紫黒色の病斑を形成します。ここから雨滴に混じって分散し、葉や果実に侵入していきます。果実に入り込むと果実に黒い穴が空きます。

この病気が今年蔓延している理由として考えられることは、昨年、台風などで桃の枝・葉が傷つき、その後タイミング悪く雨が多く降ることで菌が樹に入り込み、そしてそのまま越冬した菌が多かったからだと思います。

これを防除する方法は何があるかというと、農薬散布という方法もあるのですが、これがなかなか特効薬になりません。一番効果のある方法は、病斑のでてきている疑わしき枝を鋏で切り取り園外に持ち出し、園内の細菌の密度を下げる耕種的防除(こうしゅてきぼうじょ;栽培方法の改善による防除方法)です。摘果の時期は、毎日鋏を持ち摘果を行いながら、疑わしき枝を発見したら枝をチョッキン・チョッキン!

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(剪定した、せん孔細菌病の疑いのある枝)

福島をはじめ、多くの桃の産地を悩ませる防除の難しいこの病気によって、桃栽培の難易度は上がります。ということは、実は悪い面ばかりでないのかもしれません。難易度が上がるということは、新規参入の障壁にもなり、ライバルが増えるのを抑えられているという面もあると思います。よって悲しいような嬉しいような、複雑な心境になる病気です。

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佐藤辰彦

佐藤辰彦(さとうたつひこ)
福島県 福島市

1976年福島県生まれ。大学、大学院と経済学を学び、首都圏で会社員として働く。東日本大震災後、困難な状況にあった福島にたびたび帰省する中で、実家の「佐藤果樹園」を継ぐことを決意。アグリイノベーション大学校で有機農業と養蜂を学んだ後、2017年にUターンした。

写真家の眼 佐藤 辰彦

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