2023.05.26
田植えと山の恵みにあやかって。
みなさんいかがお過ごしですか?こちら庄内は天気のいい日は日差しが暖かいのですが、風が冷たく、朝晩は暖房器具がいまだに手放せない生活を送っています。この季節の、のら仕事といえば田植えで、どこのお米農家も家族総出で取りかかる、家族行事のひとつです。といっても、苗を田んぼに運び、田植機に載せてしまえば、後は運転手におまかせといった格好になります。
農家1年生の私からすると、田植えは毎年同じように見えてしまうのですが、運転手の夫に話を聞くと、どの年も同じということはないということでした。気温や湿度によっても苗の成長が違ったり、田んぼの土の状態も(家は特に大豆と水稲の輪作をしているということもあり)違うので同じように植えられるように準備するのは大変だということを聞きました。
そんなことを知らない私は悠長に、田植機が稲を植えながら進んでいく様子を見つめ、まっすぐ列を組んで整列している稲を見て、背筋がすっと伸び、今年も始まったな。と改めて実感する日々でした。農業は、1年1回のみの結果を積み重ねていく職業で、自然・天候相手なところも大いにあって、なかなか思い通りにはいきませんが、そこが農業のおもしろさや、尊さに繋がるんでしょうね。
田植えも無事に終わったので、自分へのご褒美として食いしん坊の私は、大好きな実家の山に山菜採りに行くことにしました。シーズンになると、「こごみ」「ふき」「みず」が採れるのですが、今年は時期が合わず、食いしん坊のお腹を満たすことはできませんでした。
例年、4月中下旬に行くことが多く、その頃は、ニチリンソウや黄色や青、紫色のコマクサや葉わさびが所々に群生していたのですが、今回はお花がもう終わっているようでした。そのかわりに、今まで見たことがないお花が咲き誇っていました。調べてみると、十字型の白い小花はコンロンソウ、花木で白い花が満開に咲いていたのは白雲木というようでした。
早速、新しく出会ったお花も取り入れて、お庭のお花+山の花+ののはなで花束を作り、母に贈りました。なぜなら今日は母の日だったからです。山や自然の恵みを借りてお花を摘み、束ねる。これは、どこにいてもできることではなく、庄内に帰ってきたからこそできる、贅沢だな。と思っています。
いろんな楽しさをくれる山ですが、ちょっとした悩みの種でもあります。私の実家が山に所有している土地は、元々棚田のような田んぼだったそうです。しかし、稲作をするには条件が厳しいため段々足が遠のき、今では少しづつ笹薮に侵食されてしまっています。手入れをしたくても農繁期はなかなか行けず、そうしていると、山に雪が降り、手つかずのまま年を越してしまうのが現状です。
少しずつ自然に戻っている、と言ってしまえばそれまでです。しかし、完全に自然に戻ってしまえば人間が土地に関わって恵みを頂くことが難しくなってしまい、土地との縁が完全に切れてしまいます。それはちょっとさみしいです。
そんなことを考えていたら、初めて夫に協生農法の話を聞いたときのことを思い出しました。そのとき私の頭に、里山を圃場に持ってくるようなイメージが浮かんだのを覚えています。樹や野菜、花、草本性のものから根菜類など、すべてを混成密生するという協生農法の考え方を山との縁を繋ぎ続けるために応用できないかな?なんてぼんやり考えながら、山との関わりかたを模索していこうと思います。
Kuchiru made mederu(朽ちるまで愛でる) 佐藤 千穂
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佐藤千穂(さとうちほ)
lKuchiru made mederu
山形県 鶴岡市
1982年山形県生まれ。庭に育つ植物と触れ合う幼少期を過ごし、生花店で働きはじめる。楚々とした野花の持つ素朴な美しさに心惹かれ、2023年3月「Kuchiru made mederu(朽ちるまで愛でる) 」を開業。不耕起・無施肥・無農薬を基本に、150種類以上の花木・果樹、野菜・花・ハーブ・スパイスなど様々な植物を一つの圃場の中で密植して育て、圃場の多様性を高めて循環させていく「協生農法」に挑戦する。
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