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2022.08.19

関西勉強会に参加して

みなさんこんにちは!8月に入りましたが、暑い日が続きますね。圃場のある青梅市も38度を超えております。早朝の涼しい時間帯に収穫していても汗が噴き出してくるほどです。

先日は、STLの関西勉強会の2日目に日帰りで参加することができました。自然栽培の先導者である川越俊作さんと一緒に、京都の安井さんの農園の自然栽培を始めて1年目の圃場を視察。田んぼを畑へ転換した圃場は、作土層の深さなどが私の圃場とも似ている環境なので興味津々です。圃場の真ん中をスコップで掘り上げ、エンバクを栽培して混ぜ込んだ土壌の状態を見たり、岩盤までの深さを確認。とても良い状況へ向かっている印象でした。栽培する麦類も、柔らかいエンバクから固い小麦や大麦へ移行させてはどうか、などというお話がありました。

その中で、トラクターで耕うんする速度や深度を“人間都合でやらない”とのお言葉に、はっとさせられました。トラクターは超低速で、できるかぎり浅く表層部のみを、腐植を壊さないよう、酸素を入れてあげる感覚で耕す。ロータリーで耕うんしても届かない深さの層は機械や人ではなく、作物の根で耕す。人の手を極力加えない、自然のリズムに合わせて、自然の力を利用する。

日没に間に合わない!早く定植しなきゃ!などと、自分の都合で速度を上げてトラクターを走らせていたことに大反省です。目先のことに気を取られ、人の都合による判断を無意識に行っていたことに気づかされました。同時に、迷いや問題が生じた時、川越さんがおっしゃる“自然界により近く”という思考で判断すると、導かれるように解決策が出てくるのではないかと。この域に達するまでにはまだまだ経験が未熟すぎですが、そういう意識はずっと持ち続けたいと感じました。

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昼食には川越さん栽培の全粒粉の中華麺を頂きました。全粒粉はクセが強いものに当たることが多いですが、心地よい香りが漂う、とても優しい味わいの美味しい中華麺に感動でした。

京都市内への帰路は幸運なことに川越さんと同乗させていただき、京北の山間部の古くからの集落が点在する狭い山道を走りながら、様々なお話をお聞きすることができました。その中で、川越さんの圃場の線虫数を調査したら、「凄い数の線虫だった!」と話されたことに、農作物に被害をもたらす病害虫と思われがちな線虫が多いのに、それが“凄い”というのはどういうこと?とびっくりしてしまいましたが、話を最後までお聞きして、これは凄いことなんだ!と知りました(笑)。

土壌動物としての線虫は自然界の土の中に必ず存在して、土壌生物同士の食物連鎖に必要な存在。つまり、農薬を使用することで土中のバランスを人の手で壊すことにより食物網が破壊され、農作物に害を与える害虫が多く生き残ったり、増えたりする。自然に近い土中のバランスが保たれていること(線虫も他の土壌生物も存在する状態)が、線虫の被害にも遭わない栽培に繋がっているのだと。そうなると線虫の数や種類が多いということは凄い土なんだと。凄く納得しました。

また、川越さんのお話の中で頻繁に“バランス”という言葉が出てきました。バランスを意識するには知識や経験に加え、観察眼や感覚、何より自然の意味を考え、自然界のことを知らないと意識することすらできない。バランス感覚を身につけるために、まずはひとつひとつの畑とがっつりと向き合うことからはじめよう。

川越さんのおっしゃる自然栽培の結果が出るまで8年。人の都合のサイクルで考えると我慢と忍耐の必要な年月。自然界の循環における長い年月をかけたサイクルで考えると、8年は極短い時間でしかない。人の手により崩された土のバランスを、“土が誕生した原点に戻り”、土壌微生物の力と少しの人の手によって自然な土に時間をかけて戻すことは、世代を超えて続けていかなければできないことかもしれないと。色々と考えを巡らせた一日でした。

日帰り日程で短くも長く凝縮された一日でしたが、全国から集まったSTLの皆様とお会いできた嬉しい機会にもなり、貴重な夏の一日にもなりました!川越さん、STLのみなさん、ありがとうございました。


lalafarmtable(ララファームテーブル)
HP https://lala.farm/
Instagram @lalafarmtable

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奥薗和子

奥薗和子(おくぞのかずこ)
lalafarmtable
東京都 青梅市

1975年鹿児島県生まれ。12年間フローリストとしてドイツに滞在しフラワーアレンジを学ぶ。自生する植物、蔓、枝、苔、樹皮などを用いた手法を知る中で、自ら自然に近いかたちの草花を育てたいと思い至る。また、彼の地の「五感に訴える野菜」に衝撃を受け、帰国後、2019年4月、「lalafarmtable」を開く。ハーブ、草花、伝統野菜などを無農薬・無化学肥料で栽培。農地に関わる全てが笑顔になれる農業経営を目標に掲げる。

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