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2023.04.24

ブドウの苗木と植樹と未来と

今年もブドウ苗木の植樹祭を4月1日、2日に開催いたしました。遠方は長野から、仙台や東京からも。本当に助かりました。ありがとうございます。天気にも恵まれ、参加者は自然と触れ合い、とてもピースフルな空間でした。ワインのプロフェッショナルたちも訪れ、様々な方々に参加していただきました。

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今年もなんとか苗木を確保できましたが、ワイン用ブドウにおいて苗木を確保するのは現在の日本では至難の業。小さな苗木屋が日本にはいくつかありますが、完全にブラックボックス化しており、海外と比較してその辺のインフラが全く整っていません。新規の取引は基本的に門前払いなので、新規参入者が入手するには運よく他業者の発注した苗木が余っていたり、親しい友人知人から譲っていただくほかありません。

そんな事情もあり、新規ワイナリーはよく「土地に何が合うかわからないし色々と植えてみる」「他地域から原料を買い付けて醸造だけしてワインとして他地域に売る」ことになりがちなのですが、いろんな品種に手をつけすぎると、マニュアル化も困難になり、ブランドも立たず、混植混醸系は文脈等が無いとなかなか売りにくくもなります。「あの地域はこの品種、仕立て方、造り方」といったものがあると、認知や援助もされやすく、経験値も集積し累乗的に技術が向上していくものです。

私が植えている「アルバリーニョ」というワイン用白ブドウ品種。ワイン用ブドウには「役割」や「ブランド」があり、例えば、他の品種には補色や補糖や華やかさなどを担う様々な役割がありますが、この「アルバリーニョ」は「補酸」かつ「海のワイン」の役割を担います。スペインやポルトガルなどのリアス海岸地域が故郷の「アルバリーニョ」は、海との結びつきがとても強く、海産物との相性が抜群です。また、ブドウのpHを低く保持できて今後の温暖化にも対応しうる品種で(その理由はまた今度ブログで紹介します)、ワインの生産において、主役にもなれますが、醸造や経営の面においてサポート役としてとても優秀です。まさに「サーバントリーダー」。

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(植樹祭が終わった後、陸前高田の行きつけ「鮨まつ田」さんでの打ち上げにて。アルバリーニョの酸とお寿司はよく合います)

日本最大のリアス海岸である陸前高田(三陸海岸)で「アルバリーニョ」を栽培すること。「三陸海岸×アルバリーニョ」は、科学的根拠とブランド感の親和性がバッチリ合う、地域の未来のためにも、業界の未来のためにも、誰かが思い切って取り組んでいかなければいけないこと。単一品種のみで取り組むワイナリーなど全国的にほぼ無く、苗木の調達や資金の工面、政治的配慮など総じてハードルは高いですが、だからこそ他が真似しようと思っても真似できないワイナリーになります。0→1で、20代で、ワイナリーを創り上げるのは大変なことも多いですが、とてもやりがいがあります。未来への投資。今年植えたブドウたちが生り始めるのは3〜4年後。とても楽しみです。

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ドメーヌミカヅキ
HP https://domaine-mikazuki.com/

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及川恭平

及川恭平(おいかわきょうへい)
ドメーヌ ミカヅキ
岩手県 陸前高田市

1993年岩手県生まれ。高校2年時に地元・陸前高田市で東日本大震災を経験。残された自分が生きる意味を問い、地元産業の担い手になることを決意。醸造、法律、テロワール(味や性質を左右する土壌や気候、職人の技術などとりまく環境のこと)理論、営業、経営の知識を身につけ、2020年帰郷。リンゴとブドウの栽培を始め、2021年3月、ワイナリー「ドメーヌ ミカヅキ」を開業。自家醸造所の建設も視野に、まちづくりに貢献する経営を目指す。

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