2023.05.12
生長と管理と草刈りと
今年、りんごの花は史上最速と言われるほど全国的に早く開花。海も温暖化で水温が高まり貝毒が頻発してくるようになり、気候変動の影響をじわじわとひしひしと感じています。私のりんご畑でも、通常はゴールデンウィーク中に満開になる予定が、4月25日にはほぼ満開。それに伴い、並行する他の作業と準備とで、てんやわんや。圃場の増設、植樹、支柱立て、石拾い、剪定枝焼却、竹の粉砕、事務処理などなど。できれば二十四節気の「穀雨」までにはいろいろと終わらせたいところ。
(4月16日のリンゴの花。早く咲きすぎて遅霜が心配でした)
(4月15日に竹林伐採イベントを開催。こちらは伐採前)
(伐採後。光が入り風通しがよくなりました。イベントには東京や仙台等遠方からわざわざ来ていただきました)
植物はもう本番突入。今年の第1回目草刈りは4月26日でした。これから延々と8月まで草とのチェイスレースが始まります。そして「草刈り」をしっかりすることで、2つの意味で「風通し」を良くします。
1つ目は、単純に健全なブドウを作るための「畑の換気」。畑の病気は"水"を介し蔓延してしまいます。そして腐敗菌に侵されたブドウがわずかでも果汁に混入すると、醸造の際にワインが汚染される原因になってしまいます。そのリスクを少しでも減らします。
2つ目は、「地域への信頼担保」。「草刈りしている=ちゃんと管理している」といった風習や認識もあり、こまめに草刈りをしたほうが、いろいろと円滑に物事も進みます。良い土地を紹介していただけることにも繋がり、より良い環境で栽培ができ、より良いワインができ、経営にも良いと言えます。
特にも、日本には「台風」が来るので、生育期の降雨量が過多で草の勢いが強すぎます。あらゆる面のコストや事情を考えると、黙ってこまめに刈ったほうがいろいろと合理的です。また、その草刈りのために「石拾い」も重要です。草刈りの際、石ころが畑にあると、石が跳ね「モア」の機体に損傷を与え、刃も欠け、かなり草刈りの邪魔になるので、地味ですがとても重要な作業です。他にもワイン造りに大事な要素として「洗浄」があり、農機具も丁寧に洗わなければすぐ錆びて長持ちしませんし、醸造設備も汚染や異物混入が起こらないように清潔にする必要があります。まさに「ワイン造りとは"洗浄"と草刈り"」。
刈払機だけでは草の生長にとても追いつかず、ワンシーズンが草刈りだけで終わってしまうので(1年目はそうでした)、「モア」は個人的に「三種の神器」のひとつです。あと2つは「スピードスプレーヤー」と「バックホー」。これらがなければいつまで経っても作業管理が追いつかず、果樹で生計を立てていくのは無理に等しいと思います。借りるなり購入するなり、必要な初期投資です。スピードスプレーヤーはつい先日ようやく念願叶い格安で入手でき、バックホーは知り合いの建設会社の社長からご厚意でいつでも貸していただいています。機械で効率化しつつ、私が在るのは周りの支えがあってこそだなと改めて感じます。日々感謝、日進月歩です。
(ブドウの苗木は地道に丁寧に植え付け。腰にきます)
ドメーヌミカヅキ
HP https://domaine-mikazuki.com/
及川恭平(おいかわきょうへい)
ドメーヌ ミカヅキ
岩手県 陸前高田市
1993年岩手県生まれ。高校2年時に地元・陸前高田市で東日本大震災を経験。残された自分が生きる意味を問い、地元産業の担い手になることを決意。醸造、法律、テロワール(味や性質を左右する土壌や気候、職人の技術などとりまく環境のこと)理論、営業、経営の知識を身につけ、2020年帰郷。リンゴとブドウの栽培を始め、2021年3月、ワイナリー「ドメーヌ ミカヅキ」を開業。自家醸造所の建設も視野に、まちづくりに貢献する経営を目指す。
- 過去の記事を読む