2017.11.04
冬の始まりはいつも
能登の入り口に位置する羽咋(はくい)市には、邑知潟(おうちがた)という大きな潟があって、その潟の周辺に、石川県内でも有数の生産量を誇る水田地帯が広がっています。
10月下旬、稲刈りを終えたその水田に、今年も白鳥たちが北の国から帰ってきました。
豆腐屋さんの鳴らすラッパの音を少し低くしたような声で「クワックワッ」と鳴き交わし、
10羽前後の編隊が大きく旋回しながら約束の地に降り立ちます。
「ああ、今年も帰ってきたね〜」そんな挨拶を交わす度、土地の人に今年も冬が始まろうとしていることが刷り込まれていくようです。
この時期は、どこでもそうだと思いますが、収穫祭的なイベントが目白押し。
農林漁業まつりだとか、JAの展示会だとか、地域の文化祭的なものだとか、
大小様々なイベントが開催されます。
今年から製造を受け継いだ漬物グループにとって、これら一連の祭りは、大きな収益源であり、またJAや県、地域との付き合いでもあり、従来から定番メンバーとして出店していたようです。
よって今年も自動的に参加したのですが、んもう〜忙しいのなんのって。
この2、3週間、レンコン掘って、薪作って、山仕事を体験するイベントを主催して、
漬物作って、祭りで販売して、と書いてるだけでまた頭に血が上ってくるような感じです。
現状、大きな山は越えつつありますが、
「ちょっとこれ、来年からスケジュール組み直さなきゃな」と考えているところです。
そんな折、隣のおじさんが「かぶらずし(切り目を入れたカブにブリやサバなどを挟み発酵させた、加賀能登地区伝統のなれずし)を作るのなら、間引きのカブをあげるから植えたらどうか」と言ってくれたので、手付かずだった家の横の小さな畑に早速植えてみました。
かぶらずし、美味しいんだよなあ。ちゃんと育ってくれるかなあ。
そんなささやかな楽しみを積み上げながら、今年も冬が始まろうとしています。
(間引きしたカブでもちゃんと育つよ、と教えられ、おじさんに言われるまま植えたカブ)
新田聡(にったさとし)
石川県 羽咋市
1969年石川県生まれ。震災で居住地の放射線量が高くなったことを機に、生きる道を模索し農業を選択。2013年、出身地の小松に近い羽咋市で「ウッドランドファーム」を開く。人が集う「山の駅」を作りたい、山で音楽祭を開催したいなど夢が広がる。