2017.08.06
農家の成長について思うこと
雨が降らないと思っていたら、突然極端に降る。そしてまたパタッと降らなくなり、
またドバッと。という訳のわからない梅雨を過ぎ、季節は夏。
僕の住む能登の田んぼは、もういたるところで稲穂が顔を出し始めています。
それと同時に、ラジコンヘリによる農薬散布がここいら一帯で盛大に始まり、朝の空気をちょっぴり薬臭くしています。
僕もこのラジコンヘリ、移住直後のJAバイト時代に手伝いに駆り出されたことがあります。
まだ暗いうちに集合して準備や打ち合わせをします。その後各班に別れて一斉に現場に散り、
トランシーバーを持ち田んぼの周りを走り回る、あるいはタンクに薬を充填するなどして、
およそ午前中いっぱい地区を渡り歩いてカメムシ退治をヘトヘトになってやるわけです。
管内を一通り撒き終わるのに10日くらいかかったと思いますが、それを2回やらなきゃならないという結構大変なイベントでした。
これでカメムシが稲穂にチューっと口を差し込み、大事なお米に黒い斑点をつけることを劇的に減らすことができるのであればいいのですが、なかなか簡単にはいかないようです。
一斉にやるってことは、各圃場個別の生育状況をきちんと見るというより、
オペレーションを滞りなく遂行する効率性の方にどうしても意識がいってしまいますからね。
慣行農業の場合、こうした効率性の罠がいたるところにあるように思います。
とはいえ、規模をこなそうと思えば慣行であろうが僕のような自然栽培であろうが、
作業の効率を考えなければならないのは当然のことです。
当然、知らず知らずのうちに効率性の罠が作られていくということもありえます。
なんとなく最近思うのですが、そうした罠にはまることなく且つ効率を追求しようとするとき、その効率を図る「時間軸」をどれだけ長く考えられるかということが慣行においても、
有機・自然栽培においても大切なんじゃないか。
更にいえばその「時間軸の長さ」こそが農家としての成熟度なんじゃないか。
とそんなことを徒然に考えたりもします。
今、僕の田んぼでは2年前に思いつきで畔に移植したミントが旺盛な繁殖力を見せつけています。これがカメムシを遠ざけてくれるかどうかはまだ定かではありません。
それに、僕みたいにただなんとなくやってみたことと、長いスパンで効果・効率を考え抜いた施策とでは、たとえ同じようなことをやっていても結果はだいぶん違うんだろうなあと、
ちょっと悲しい気持ちにもなります。
ま、考えても知恵の出ないときは動くしかないですからね。
(田んぼのミント。ほんと旺盛な繁殖力。心なしかホタルが減ったようにも思うが杞憂であってほしいです。)
新田聡(にったさとし)
石川県 羽咋市
1969年石川県生まれ。震災で居住地の放射線量が高くなったことを機に、生きる道を模索し農業を選択。2013年、出身地の小松に近い羽咋市で「ウッドランドファーム」を開く。人が集う「山の駅」を作りたい、山で音楽祭を開催したいなど夢が広がる。