2017.07.07
農林業の生み出すもの
季節は梅雨。
とはいえ、今年は雨も少なく気温もあまり上がらず、なんとなく変な感じですね。
おかげと言ってはなんですが、恒例の里山体験プログラム「山しごとの一年」は晴天に恵まれ、
今回も13組30名の親子が参加し、里山の自然と原木椎茸の仕事を楽しみました。
今回のプログラムは「原木椎茸の本伏せと秘密基地作り」。
「本伏せ」というのは、これからの季節の高温と過湿に備えて、
椎茸の原木を風通しよく、且つ適度な日光と雨に当たるように、
組み替えをしたり遮光ネットを張ったりして環境を整える作業なのですが、
原木を井桁に積み上げたり、周辺の木に遮光ネットを縛ったりするそれだけの作業でも、
山の心地よい空気の中にいると皆楽しんでやってもらえます。
(本伏せ体験:原木を風通しよく隙間を開けて積み上げ、木に遮光ネットをくくりつけ日陰を作ります)
秘密基地作りでは、用意したロープやノコギリ、ブルーシートなどを使って
ブランコや自分たちの家を思い思いに作ったり、
ハンモックや、スラックラインという簡易綱渡りキットを使って遊んだりしているうちに
あっという間に時間が過ぎていきました。
(秘密基地:いつの間にか大人も夢中になる秘密基地作り)
プログラム終了後、関わったスタッフでアンケート結果を見ながら反省会をするのですが、
毎回とても満足度の高いことがわかります。
大人2000円、子供500円の参加費も適正との回答が多く、
休日に子供と自然の中で思う存分遊ぶための出費として考えれば、
安いものなのかもしれません。
僕の農園ではそのほかレンコン掘り体験のプログラムも実施していますが、
こちらも募集後すぐに予約が埋まる盛況ぶりです。
企画内容の検討や準備のことを考えると、毎月のようにはできないのですが、
農林業が生み出せる価値というのは、農産物に限らないんだなあと実感しています。
山では、他にも金沢大学の教授がミツバチの巣箱を設置したり、
里山では厄介者扱いされているクズの利用法を研究している友人が
試験的に農地を開いたりしています。
自然と共に生きる農林業には、食糧生産だけでなく多様な可能性が秘められているんですね。
その可能性をいかに洗練し、社会にとって価値あるものにしていくのか、
それが僕の農園にとっての大きな課題だと思っています。
あんまり考えると気が遠くなるんですけどね。
(ミツバチ巣箱:教授が設置したセイヨウミツバチの巣箱。近くにはニホンミツバチの巣箱を置いている人もいます)
(クズ研究:開墾してまずはソバを植えるそうです。クズ堆肥も熟成中です)
新田聡(にったさとし)
石川県 羽咋市
1969年石川県生まれ。震災で居住地の放射線量が高くなったことを機に、生きる道を模索し農業を選択。2013年、出身地の小松に近い羽咋市で「ウッドランドファーム」を開く。人が集う「山の駅」を作りたい、山で音楽祭を開催したいなど夢が広がる。