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2017.04.30

基本的に前向き

毎年4月を迎える頃、僕は頭と体のポテンシャルを極限まで発揮しなければ
ならないことになっている。

原木椎茸「のと115」は収穫時期の終盤で、わんさか生えてくるのと、
気候が暖かくなり虫が入りやすいのとでてんてこ舞い。
加えて来シーズンに向けての原木の用意と植菌(1m幅に切った原木にドリルで穴を開け、
椎茸の種駒を埋め込む作業)を終えなくてはならない。

蓮根も収穫を4月上旬までに終えて、掘り穴を埋め、水を張れる状態にならし、水張り、施肥。
自然栽培のお米も、田植えの準備あれこれ。と、ミッションてんこ盛り状態。

それらのスケジュールを日々モザイク状に組み合わせながら、怒涛のごとくこなすことを
前提の営農計画になっており、結果「誰がこんな計画にしたんじゃ!」と
天に唾しつつ駆けずり回ることが慣例となっている。

加えて4月は年度始めでもあり、各種補助金の報告書や申請なんかも集中。
補助金って、申請する時はもらいたい一心で一生懸命考えるんだけど、
いざもらう時には証拠書類や報告書の作成など、思わず遠い目をして
水平線の彼方を見つめるようにフリーズしていく様な感覚を覚えることになるのだが、
これも慣例。

今年はそれに加えて、僕の農園の部活動として始めた、通年の自然体験プログラム
「楽しい!おいしい!山しごとの一年」の第2回プログラムの予定。

それと市役所からの紹介で、地元のおばあちゃんたちの「不思議漬け」という
漬物製造グループの引き継ぎ。「製品とレシピは繋いでいってほしい」との想いを受け、
材料調達、製造、販売など全ての業務を引き受けることになった。

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(おいしくてびっくり!知る人ぞ知る地域の特産品「不思議漬け」の作業風景)

さらに、昨年の稲刈りから手伝い始めた、12町を一人で管理している親方稲作農家の
バイト兼ストレス発散相手という難易度の高いミッションも加わり、
さしずめ頭の中は、あちこちの祭りに出たくて一人ハイテンションな下町のおじさんの様に
ヒートアップしている今日この頃なのである。

そんな中、4月中旬には町の春祭り。
子供が少なくなって存続が危ぶまれる獅子舞がなんとか今年も披露された。
小学生の息子が初めて獅子頭をもち、僕は毎年神輿をかついでいる。
過疎化が進む里山地域は新しい刺激など望むべくもなく、
ルーティンすらも回らなくなっているのである。

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(天狗と獅子によって舞う伝統の獅子舞)

さて祭りも終わったし、移住5年目、就農4年目のこの混沌とした状況から、
僕たち家族と地域が生き抜く道しるべを今年も探し始めよう。

challenger

新田聡

新田聡(にったさとし)
石川県 羽咋市

1969年石川県生まれ。震災で居住地の放射線量が高くなったことを機に、生きる道を模索し農業を選択。2013年、出身地の小松に近い羽咋市で「ウッドランドファーム」を開く。人が集う「山の駅」を作りたい、山で音楽祭を開催したいなど夢が広がる。

写真家の眼 新田聡

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