2017.11.03
「はざがけ」の知恵
今年から作り始めた田んぼで、
独立してから初めて「はざがけ」(稲の天日干し)をやりました。
今まで一部を手伝うことはあっても、
バインダー(稲を刈りながら、麻ひもで縛って束にしてくれる機械)での刈り取りから、
ハザ(稲束を掛ける木で組んだもの。稲架と書きます。地域によってはハサ、ハセ、ハデと色々呼び名があります。)を立て、稲束を掛けるところまで、全部を通してやったことはありませんでした。
今回は、田んぼの地主さんからハザの材料が借りられたので、挑戦することができました。
ハザの材料ですが、基本的にはヒノキの間伐材を使うようです。
それが無い場合には、竹でも代用可能のようで、地主さんに借りたものも竹とヒノキの混用でした。太い竹の一種・孟宗竹(モウチクソウ)は稲を掛ける部分に使えて、少し細い真竹は足の部分専用です。
まず、最初に作ったはざがけ。
稲が地面につきそうですね…。もちろんこれではだめです。
お隣の田んぼの、はざがけのベテラン「まいっか農園」の皆さんや、
バインダーを貸していただいた方に色々とコツを教えてもらって、もう一回作り直しました。
一つ目の大事なコツは、ハザの足の位置を稲の切り株に合わせて、
重みがかかった時にずれて動いてしまわないようにすることだそうです。
こちらは直す前の悪い例。足が稲の切り株からずれて動いてしまっています。
こちらは直した後。このように稲の切り株でしっかり支えましょう!
二つ目のコツは、足を作る竹を組み合わせる時に、節の位置を合わせて、
少し上を紐で結ぶことだそうです。
直す前の竹は、長さも節の位置も全然違います…。
こんなズッコケ三人組のような組み合わせではだめなようです。
このように節の位置も合って、長さも同じくらいの組み合わせがいいようです。
三つ子の竹の節の少し上を、ひとひろ(両手を横に伸ばした長さ)に切った荒縄で二重にまきます。結びは、最後に固結びで一回。
(作り直した後のハザ)
補助の足も増やしました。これなら大丈夫そうです。
稲を掛け直しました。
これなら稲が地面に着くこともなく、ちゃんと乾いてくれるはず!
この田んぼは1反2畝なのですが、6mの長い木を15本、
足用の2mの短い木を約130本使用しました。来年のために必要な記録です。
「はざがけ」は、思った以上に大変でした…。
でも、この仕事を延々と昔の人たちもやってきたんだろうなと考えると感慨深いものもあって、こういうスローな農業が、持続可能な農業なのかもしれないと思ってしまいます。
昔のように手刈りで天日干しとなると、何人もの人が協力して、2週間以上かかるところを、
稲刈り機と乾燥機を使えば、1人で2日あれば済みます。
お金のことだけを考えれば後者なんですが、
そう遠くない未来に地球環境が悪化して、もっと環境のことが重視される時代が来たときに、
はざがけの時代が戻ってくるんじゃないかと思ったり。
昔の人の知恵も現代社会のことも、色々考えさせてくれる「はざがけ」体験でした。
このはざがけの様子を写真家・公文健太郎さんに撮ってもらいました。
こちらから見てもらえたらと思います。
写真家の眼|仲澤康治
仲澤康治(なかざわこうじ)
埼玉県 小川町
1984年茨城県生まれ。千葉大学園芸学部で学び、有機の農業法人に就職。原発事故を目の当たりにし、もう一歩踏み込んで農業を中心とした有機的な生活を志す。埼玉県小川町の霜里農場で研修し、2014年に小川町で独立。「そらつち農場」を始める。