2020.04.29
僕が自家採種をする理由
当農園の夏の主力作物は、9品目25品種。
そのうち15品種は、自家採種をしています。
もともとは、研修生時代の師匠から受け継いだもの、地域で昔から受け継がれてきたもの、その他国内、海外に存在する在来品種など、さまざまです。
違う環境からやってきた種たちは、暑さや寒さ、病気や虫など、これまでと違う不慣れな環境と闘いながらも、子孫を残そうと花を咲かせ、実をつけ、種を宿します。
その中でもより逞しく育ち、色艶が良く美しく、美味しいであろう個体を目視や直感で選び、そのまま畑に残して完熟させます。これが来年度の種になる個体です。これを毎年繰り返すことで、今の環境に適応し、年を重ねる毎により強く美味しい作物ができるようになります。
栽培をしていてつくづく感じるのは、植物たちは種という子孫を残すことを一番の目的にして生きているということです。しかし僕たちは、その過程の途中で収穫してしまいます。野菜たちにしてみれば、志半ばで絶たれるのですから、人間都合で申し訳ないことをしているようにも思えます。
せめて、品種を代表して種をとらせてもらい「今年も1年間共に過ごし、恵みを与えてくれてありがとう。また来年に会おう。」という気持ちで次世代に命を繋ぐことが、自分にできる野菜たちへの感謝と敬意だと考えるようになりました。
種は、僕にとって一緒に働く大切な仲間でもあり共に暮らす家族のような存在です。
その命ひとつひとつに思いを馳せ、種と共に成長し続けていきたいです。
さて今年も種まきシーズンのはじまりです。
(『真黒なすの種』自家採種の種は発芽もバラバラなので、種のみ加温し根を出したものから土に植え替えています。同じ種でも根を出すまで2日-20日位と本当に個性様々)
ソヤ畦畑(うねはた) 森本悠己
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森本悠己(もりもとゆうき)
ソヤ畦畑(うねはた)
岐阜県 飛騨市
1985年岐阜県生まれ。東日本大震災を契機に生き方を考え直し、食の分野で故郷の資源を活かせる仕事に就こうと決意。「土地の個性」「土の力」を最大限に活かして素材を輝かせる自然栽培に活路を見出し、2017年4月「ソヤ畦畑(うねはた)」を開く。自家採種や固定種・在来作物の栽培を通じて、野生味あふれる美味しさ、美しさ、楽しさ、種や命の儚さを表現していきたいと語る。