2015.05.13
野菜の育て方
信州松代みやざき農園では、
「人が野菜を作るのではなく、土が野菜を育てる」という考え方で野菜たちを育てます。
これは研修先の農家さんに教わったもので、
その考え方に共感し、私の畑でもそれを実践しています。
あくまで私の主観ですが、有機栽培においても一般的な栽培方法では、
「人間が野菜を育てる」という前提であるため、土壌分析をし、
野菜に必要な栄養素だけを補って育てるという考え方をします。
これは人間でいえば、栄養ドリンクやサプリメントで育てるイメージです。
理論的には確かに体が大きくなるのですが、
これだけでは何かバランスが悪い気がするのです。
私の畑では、直接野菜に栄養を与えるのではなく、生きた健全な土をつくり、
その土が野菜を元気に育ててくれるというイメージです。
必要な栄養素だけを与えて効率的に育てた野菜よりも、
良いものも悪いものも含めてそれを受け入れ、
自らの力で環境に適応し、自らの力で必要なものを選択し吸収していく方が、
力強くて生命力あふれる野菜に育つ気がします。人間と重なるんです。
いいことも悪いことも含めて経験するから厚みのある人間になっていく。
そんな力強い野菜が食べたくて、
そんな野菜を家族や友人に食べてもらいたくて、
私の農園では、生きた土づくりと、
野菜が健康的に育つ環境づくりのお手伝いをしています。
具体的には、春先の、芽吹いて生き生きとした植物を採取し、
そこに付着する多様な土着菌を集めて黒砂糖で漬け込んで培養し、
その土着菌を「米ぬか」と「もみ殻」に混ぜて発酵させ、
それをエサとなる「鶏糞堆肥」とともに畑に混ぜます。
土づくりはそれだけ。土着菌たちがいい環境を作ってくれます。
土が健全だと病気にも虫にも簡単には負けないのです。
あとは、自然の力を上手に活用するために、野菜たちの声に耳を傾けながら、
旬を大切にし、作業のタイミングに重点を置きます。
気温や天候や日照に注意を払い、その状況にできるだけ適したタイミングで仕事をします。
また、毎日一生懸命野菜たちのことを思って関わってあげると、
不思議と野菜たちもそれに応えてくれますし、小さな異常に早く気づくことができます。
だから毎日できるだけ野菜たちの様子を確認します。
野菜と人間の一生はとても似ていて、野菜づくりは、人の成長と重なるんです。
環境や天候に左右され、なかなか思い通りにはいかないことが多いですが、
あきらめずに、どうしたら良くなるのかを野菜たちと一緒に考えて行動すれば、
良い結果を生み出すことができます。だから野菜たちから学ぶことがたくさんあります。
こうした経験を多くの方にも知っていただきたいので、
私の野菜をおいしく召し上がっていただくだけではなく、
畑に来て、野菜たちに触れることで、
野菜も人も笑顔になれるきっかけを提供できる百姓を目指しています。
「野菜」も「人」も笑顔に!
宮﨑康介(みやざきこうすけ)
長野県 長野市
「食べる・知る・触れる」農業に挑戦中。飲食業界にて勤務後、「農」と「食」で人を笑顔にするべく、昨年就農。1975年生まれ神奈川県出身。