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2021.10.20

秋の光線管理とアニマルウェルフェア(動物福祉)

10月に入り、朝晩はだいぶ涼しくなってきましたね。一般的に養鶏では、春と秋の気候が安定する時期に多産期間に入ります。しかし、自然界では「秋に多産」はあり得ないこと。鶏の産卵は日長と深い関係があるため、日照時間が短くなると卵を産まなくなる性質があるのです。

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(梁の上に止まって、眠たそうにウトウトするコッコ)

「ゲージ飼い=ウィンドレス鶏舎(病原菌などが入りこまないように外界から遮断した鶏舎で、窓がない鶏舎のこと。大規模養鶏で主流)」の場合、365日空調を管理し、鶏の食欲を減らすために光を制限した空間で育てるので、産卵率が日照時間に左右されることはありません。

当園が行う、なるべく自然に近い環境で鶏を育てる平飼い養鶏では、雌鶏に秋の訪れを感じさせないよう、秋分の日から春分の日にかけて、日が落ちたあと数時間、鶏舎内を点灯する「光線管理」という飼育法を行っています。

こうして、日照時間が短くなると卵を産まなくなる性質がある鶏たちに一年中産卵してもらえるように管理し、現代では年中たまごを食べられるようになっています。普段何気なく食べている冬のたまごは、戦後の大規模養鶏が主流になる以前は大変貴重なものだったんです。

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(秋から春先まで点灯できるように全ての鶏舎内に電気を通している)

こうした管理について、動物福祉に反するのではないか?と疑問に持たれる方もいるでしょう。私も鶏だったら「眠い…早く寝たい」と思うと思います。睡眠欲求の制限を無理に課している訳ですよね。

しかし、もしこの管理をしなかったら冬場のたまごの生産はなくなり、春までたまごの収入がなくなります。お客さんに健康に育った鶏のたまごを日々提供するため、管理するのが養鶏家としての仕事であり、このたまごで私も生きているので、どこまで家畜動物の欲求と効率のバランスを取るかは常々考えるポイントでもあります。

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(上下関係の厳しい鶏社会。強い子は高い所で、弱い子は低い所で眠る。雄鶏は雌を守るため一番下で眠るジェントルマン!)

また、私が相手をしているのはペットではなく「家畜動物」です。冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、管理する側とされる側で立場が異なり、動物にはこんな欲求があると分かっている上で、どこまで応えられるかを判断するのは私達「管理する側」であり、その考え方を納得出来るか決めるのは「社会」です。

動物福祉という概念が、社会に浸透してきている今、“可哀そう”という気持ちだけで家畜動物を見ずに、どんな生態でどんな欲求を持っているのか、その要求にどれだけ応えているのか、客観的に理解し最期まで責任を持って管理することが大切だと考えています。

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(10/5順次玉ねぎの圃場準備が進む。今年は3反分頑張るぞ!!)

次回はいよいよ玉ねぎの定植に突入。忙しくなってきます!!


島ノ環ファーム
FB @shimanowa.awajishima
Instagram @shimanowa.farm
農園ブログ https://shimanowa-farm.com

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三崎咲

三崎咲(みさきさき)
島ノ環ファーム
兵庫県 洲本市

1988年東京都生まれ。農大卒業後、スイスの農家⺠宿で働き、有畜複合農業を学ぶ。淡路島へ移住後、2018年7月、夫と共に「島ノ環ファーム」を開き、念願の就農を果たす。「平飼いたまご」の養鶏と、その鶏糞や地域の竹や落ち葉といった資材を活用した無農薬・露地野菜を生産。島の名産でもある玉ねぎをメインとして15品目ほどを栽培し、「小さく地域で循環する有畜複合農業」を目指す。

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