2021.07.15
中山間地、限界集落で農業する意義とは?
アパート住まいで畑に通っていた頃、集落の人には「都会からこんな田舎にわざわざ来る気が知れない」と言われました。整備された畑しか知らなかった私達にとって、「大昔、人力で山を切り崩して畑にしたなんて…」と思うと、中山間地特有の景色と農業の仕方は歴史を受け継いでいる重みを感じます。
初めに借りた1反の畑は、元田んぼの耕作放棄地で草を刈り、排水性を確保する為スコップで外溝を掘るところから始まりました。
(3年前の開墾時。呆然と立ちすくむ様で農業が出来る喜びにワクワクしていた)
正直言って生産性だけを考えると、地の利を活かす稲作がベストで中山間地での野菜栽培は不向きです。大型機械が入らない、好きな時に水が入れられない、獣害が多い、作業効率が悪いなどむしろデメリットが多い気がします。
(猪による獣害。急遽電柵を張り直す為に段取りが崩れることもしばしば…)
それでも何故この集落を選んで農業をするのか?
一、平飼い養鶏をするための土地を探していた。
第三回のブログにも書きましたが、養鶏をするために鶏舎の建設などで人の迷惑にならない場所を探していたので、中山間での養鶏は逆に好都合でした。
※農地に鶏舎建設する際は、農業用倉庫扱いとなり農地法の定めによって農業委員会への届け出が必須です。
二、無農薬栽培農家が集まっているという利点がある。
隣集落に元研修先の「花岡農恵園」という自然栽培農家さんがおり、全国から研修生が集まり地元の信頼も厚い親方がいます。同世代の仲間が多く、付近の集落から通いではあるもののお互い助け合える心強い存在です。また、中山間では企業参入がなく、農薬を使う農家さんが少ないことも産地における無農薬栽培を行う上で必要な条件でした。
(パプリカの畑。昨年7月の長雨で壊滅的打撃を受けたが今年は順調に生育中)
私の住んでいる宇谷集落は、24世帯中3世帯が農業で生計を立てていて、専業はうちだけです。他の世帯は、年金暮らしの独居の方がほとんど。この5年でどれほどの田んぼが空いて山に還ってしまうのか、中山間での農業はどこも同じ問題を抱えていることでしょう。自分の農業の課題はもちろんですが、ここで農業をすると決めた以上は集落の課題も待ったなしで考えていかないといけません。
(集落のジオラマ。これだけの段々畑を開拓した先人達の遺産で私達は生きている)
現在、宇谷集落では「宇谷のみらいを創る会」という会を立ち上げ、地元の人達と移住者が同じ目的を持って移住就農者を誘致する活動が始まっています。
中山間で農業をすることは、田畑を守ることであり、水脈を守ることであり、集落と景観を守ること。何よりこの土地とこの景色が好きで次の世代に繋げたいという気持ちが大きい!今後、この中山間でもしっかり営農出来るぞ!という集落の就農モデルになることを目標に、少しずつマンパワーを増やす活動もしていきたいです。
島ノ環ファーム
FB @shimanowa.awajishima
Instagram @shimanowa.farm
農園ブログ https://shimanowa-farm.com
三崎咲(みさきさき)
島ノ環ファーム
兵庫県 洲本市
1988年東京都生まれ。農大卒業後、スイスの農家⺠宿で働き、有畜複合農業を学ぶ。淡路島へ移住後、2018年7月、夫と共に「島ノ環ファーム」を開き、念願の就農を果たす。「平飼いたまご」の養鶏と、その鶏糞や地域の竹や落ち葉といった資材を活用した無農薬・露地野菜を生産。島の名産でもある玉ねぎをメインとして15品目ほどを栽培し、「小さく地域で循環する有畜複合農業」を目指す。