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2021.07.02

見えない屠畜、命の温かみを知る機会を

雛から2年間大事に育てた鶏を絞めて捌く時がきました。現代の鶏は、2年程経つと産卵率が低下し、殻が薄くなるなど卵質が不安定になります。卵の高品質を保ち安定的に供給する為、一般的には2年で屠殺され、チキンエキスやソーセージの一部になっているのをご存じでしょうか。

昔の鶏は10日に一回程しか産まなかったのを、よく産む鶏と掛け合わせて改良を重ねた結果、ほぼ毎日産む鶏種が増えたのです。当たり前の中に、積み重ねた恩恵を受けて生きているんだなぁ…とたまごを見る度に思います。

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(左側はベテラン鶏が産んだ少しいびつなたまご。このシワも私達にとっては愛おしい)

養鶏を始める前、色々な所で鶏を絞める経験をしましたが、初めて自分達で育てた鶏でもあり思い入れもひとしお。この気持ち、肉を食らう誰しもに味わってもらいたい感覚でもあります。身体を押さえ、よく研いだナイフで耳の下の頸動脈をスパッと切ります。無駄に苦しめない為にも躊躇できません。しっかり切れると血液がサーっと流れ、赤かったトサカも真っ白になります。絶命するまでの力は凄まじく、色んな感情が入り乱れますが、やっぱり感謝の気持ちが大きいことに気が付きます。
「たくさんの事を教えてくれて、有難う。」
いつしか慣れの作業になるけど、これからも感謝と敬意の気持ちを持って、ひとつの命の最期と向かい合いたいと思います。

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(手順:頸動脈を切る→放血→60度前後のお湯に浸け毛をむしる→細毛をバーナーで焼く)

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(毛をむしると思った以上に小さな体。スーパーの肉鶏がいかに大きいかよくわかる)

捌き方は身体で覚えるしかないため、知り合いのシェフさんに来てもらい正しい捌き方の動画を撮影して反復練習。捌き始めると、「この子は砂肝に石がないからグリッド(小石)が少し足りないかもね」「この子は卵管が詰まってるね」など。身体の内部をより深く知ることで今後の生育環境の改善を図れそうな予感!

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(どんどんお肉になる鶏を見ては、「この部位は絶対美味しいね!」と盛り上がる)

本来ならばお肉も売りたいところですが、鶏肉は食鳥処理施設を通さないと販売できません。大型養鶏が主流になり、淡路島では現在小規模な食鳥処理施設は登記上存在しても機能していませんが、いずれ何らかの手段で復活させ、お肉の販売に繋げたいと現実的な野望を抱いています。

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(さっきまで生きていた鶏の焼肉。自由に走り回った肉は硬いが旨味が非常に濃い)

うちの鶏さんは、噛むほどに鶏油が滴り旨味が凝縮していて、想像のかなり上をいく美味さでした。やはり健康に育った肉は理屈抜きで美味いと実感。自分たちの養鶏は間違っていない!という自信にも繋がりました。

今後十分に技術を磨いてから、小規模な養鶏だからこそ伝えられる「命を頂くワークショップ」を考察中。目まぐるしい日常の中で、少し立ち止まって考え、再び食卓を囲むような大人の食育会を開きたいですね。


島ノ環ファーム
FB @shimanowa.awajishima
Instagram @shimanowa.farm
農園ブログ https://shimanowa-farm.com

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三崎咲

三崎咲(みさきさき)
島ノ環ファーム
兵庫県 洲本市

1988年東京都生まれ。農大卒業後、スイスの農家⺠宿で働き、有畜複合農業を学ぶ。淡路島へ移住後、2018年7月、夫と共に「島ノ環ファーム」を開き、念願の就農を果たす。「平飼いたまご」の養鶏と、その鶏糞や地域の竹や落ち葉といった資材を活用した無農薬・露地野菜を生産。島の名産でもある玉ねぎをメインとして15品目ほどを栽培し、「小さく地域で循環する有畜複合農業」を目指す。

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