2018.06.19
名も無い野菜達
私は、小さい頃から野菜が好きでした。ひとくくりに野菜と言っても、その種は多岐にわたっていて、それぞれに個性的な味わいは飽くことが無く、今年も初採りの茄子に感動してしまうのです。
高校生ぐらいになり、遺伝学を学ぶようになったころから、植物としての野菜に興味が湧き始めました。ほうれん草には、雄株と雌株があり雌雄異株(しゆういしゅ)と呼ばれているのですが、芽が出てからどちらになるかが決定されるんです。生まれた時から女である事が「普通」だと思っていた私は、野菜の自由奔放さ(?)に嫉妬すら感じました(今思えば動物だって多様ですけど)。
就農する前、農山村へ野菜調査の旅にでてみた際、人と野菜の繋がりを意識する事になりました。見た事の無い南瓜を育てるおじいちゃんに、南瓜の名前を尋ねると「名前なんてない、ただの南瓜や」って答えてくる。大切に種を繋いで育ててきた、飢饉に強い「ただの南瓜」と出会った時、私は野菜を人の旅の相棒のように感じて、もっと好きになりました。
私の農園では、名も無い野菜達が花盛りです。地中海あたりからやって来た大根、人参、菜っ葉類は、本当は日本の夏がちょっと苦手です。雨模様と睨めっこして、種を刈り取ります。
(花としても可愛い人参)
松本真実(まつもとまみ)
滋賀県 東近江市
1981年生まれ。大学院卒業後、分析機器の会社で研究職につく。会社員時代から在来種の野菜に興味を持ち研究調査に同行。さまざまな農家と出会って就農を決意する。三重の有機農業法人に2年間勤務した後、2016年、滋賀県東近江市で、菜園「野菜と旅する」を開く。