2017.12.06
トマトの土壌と向き合う
水田跡地でトマトを作付けすること3年目。牧野農園では、シーズンが終わるたび、トマトの残渣(収穫後の茎や果実等の不要物)を土壌にすき込んでいました。それにより腐植(土壌中の動植物が分解・変化した土壌有機物)の補充、栄養素の還元ができ、片付け作業も軽減されます。しかし、今年は、残渣由来と思われる病気がちらほら現れるようになってしまいました。
すき込み時には、悪い菌に拮抗するEM菌資材を一緒に混ぜたりするのですが、不十分なのかもしれません。その見直しも必要かもしれませんが、今回は、そもそもの「残渣すき込み」について、一度立ち止まって考えてみることにしました。
まず、「病気におかされている株をどうするか?」という問題です。
これについては、なんとなく持ち出していた過去を改め、しっかりと手順をつくり、搬出を徹底することにしました。
(株を50~60㎝単位で切断し、通路に落としていく。その際、断面が褐色になっている病気株は畝の上においていく。最後はシートに病気株を集めていきサンタクロースのように背負ってハウスの外に持ち出す。)
この方法は、多少時間はかかるけれど、残渣すべてを外に持ち出すほどの苦労はなく、切断もリズミカルで心地よく没頭できる管理作業の一つとなり、個人的にお気に入りとなりました。
次に、「未収穫に終わった大量の果実をどうするか?」という問題です。
残った果実からは、不良の種が発芽し病気を引き寄せるかもしれません。そのため、今までは大変な思いをしながら圃場から出してみたりして、素直にすき込むことができませんでした。
今回は、何件かの農家さんに聞いたり、落ちている腐敗した果実の臭いをかいでヒントを探ったりしてみて、結果、果実の残渣は残すことにしました。これは搬出が大変だということが一番の理由です。心配な不良種の発芽に関しては、早めの除草をすれば良い、ということにしました。
(様々な腐敗したトマトの臭いをかぎましたが、腐敗臭はほとんどなく、消毒液のような澄んだ香りが印象的でした。これらのトマトからは、翌年不良の種が大量発芽する可能性もあり、注意が必要です。)
ということで、残渣をすき込む時には果実を含め、病気のない残渣はすべてすき込むことに決めました。
また、ある農家さんは、翌春ハウスに残した残渣を燃やすそうです。そうすれば病気の心配は少なくなるし、搬出作業もなくなり非常に楽そうです。牧野農園でも、今年は残渣すき込みは1棟だけにし、その他のハウスは、乾燥した残渣を翌春燃やすことにしました。ただ、そうすることで今まですき込んでいた残渣による腐植分がなくなるので、相当量の熟成堆肥を投入するのが理想となります。でも、牧野農園が自家製の堆肥を作るには、物理的にハードルが高く、今年は断念しました。その分は肥料屋さんから購入する腐植酸資材で代用しようと思います。
振り返れば、5棟あるトマトハウスの土壌は、すき込み型、腐植酸投入型、輪作型(前々回のブログ参照)と、3パターンになりました。ゆくゆくは自家製堆肥投入型も誕生させて、牧野農園ならではの「これ」という農業スタイルを探っていきたいと思います。
牧野萌(まきのもえ)
北海道 蘭越町
1983年宮城県生まれ。宮沢賢治に憧れ岩手県立大学で環境政策を学ぶ。震災後、野菜を作る勉強をしようと料理人の夫と1歳半の娘と仙台から移住。蘭越町で研修を受けた後、就農、「牧野農園」を開く。トマトを選んだのは、夫が得意なイタリア料理に使えるという理由も大きい。