2017.10.30
ポマランチャな経営構想
「ポマランチャ」とは、「オレンジの果実」を意味するポーランド語です。
偶然目に飛び込んできた単語なのですが、発音のかわいらしさに惹かれて、ひそかに牧野農園の愛称としています。そして、今では牧野農園の経営方針を作る上で、なくてはならない言葉となっています。
「ポマランチャ」という言葉のある北方の農業国ポーランドからは、学べることが多くあります。また、オレンジ色は、炎や実りの風景など、私たちの農的暮らしのイメージカラー。そして「ポマランチャ」というかわいらしい響きの言葉を取り入れることで、親しみやすさを持つことを忘れないようにしていきたいと思っています。
そしてこの秋から牧野農園では、ポーランドの代表的な作物、ライ麦を取り入れた輪作に挑戦し始めました。
(今までトマトハウスは連作していましたが、生育の良くない1棟をひと月早く片付け、輪作を取り入れることにしました。トマト跡地にライ麦を秋撒きしました。「こんなんでいいのかなぁ?」と勉強不足で不安に思いながら作業終了。)
予定では、来年の夏(7月上旬)にライ麦を収穫し、秋口(9月上旬)にイチゴの苗を植えます。イチゴは、再来年の初夏(5〜6月末)に収穫し、その直後(7月上旬)、トマトを作付けします。
これはどういう輪作体系になるかというと、下図を参照ください。トマトハウスには5年連作の後、イネ科(ライ麦)とバラ科(イチゴ)の輪作を入れます。イチゴハウスは、1棟しかない分確実に連作障害を回避したいので、毎年場所を変えます。ライ麦を挟むのは、輪作にはイネ科が良いと小耳に挟み、なおかつタイミング的に栽培が可能だったからです。詳しい良否は分かりませんが、とりあえず、挑戦です!
(縦は時系列、横は経営の柱となる大型ハウス6棟を示してます。)
ちなみに、輪作をするとかならず遅植えとなるトマトハウスが出てきてしまいますが、栽培の容易さと密植によりデメリットをカバーすることができます。
(今年10月1日に撮影した遅植えのトマトの様子。)
通常のトマトは5月頭の定植から10月末までの長期のため栽培期間中「なり疲れ期」があり、栄養生長(茎や葉を大きくする)と生殖生長(果実を実らせる)のバランスをとる技術が必要となるのですが、7月定植のトマトは遅植えで短期間栽培のため、なり疲れになる前に摘心(主枝の先端を摘み取り生長を抑制すること)ができ、生殖生長がメインの栽培となり管理が容易です。さらに、繁茂することもないので密植栽培が可能です。
そして余談ですが、1棟しかないイチゴハウスの話です。
一昔前、蘭越町豊国部落はイチゴの名産でした。今ではイチゴの生産者も数件となってしまったのですが、名産地だった昔の名残で、豊国部落ではそれぞれの家庭で100~500株ほどのイチゴ菜園を持っています。私のイチゴ栽培も同じような規模で恥ずかしいですが、「豊国部落に行ったらイチゴをおなかいっぱい食べられる」そんなわくわくするような光景を継いでいけたらいいなと思っています。そして、なんとポーランドもイチゴの産地。北方系の作物としても、この1棟を大事にしていきたいです。
(不安とともに撒いたライ麦。ハウスのビニールがかかりっぱなしで土壌水分が不十分の環境でも、芽を出してくれました!)
ライ麦栽培も、連作障害対策としてだけでは楽しくないので、来年は実も収穫し、ポーランドの郷土料理「ジュレック(ライ麦を発酵させて作るスープ)」を食べたいと思っています。
イチゴもライ麦も、牧野農園の特色になればいいなと期待を込めてポマランチャな経営構想を現実に落としていこうと思います!
牧野萌(まきのもえ)
北海道 蘭越町
1983年宮城県生まれ。宮沢賢治に憧れ岩手県立大学で環境政策を学ぶ。震災後、野菜を作る勉強をしようと料理人の夫と1歳半の娘と仙台から移住。蘭越町で研修を受けた後、就農、「牧野農園」を開く。トマトを選んだのは、夫が得意なイタリア料理に使えるという理由も大きい。