2017.07.31
トマトの自然体な栽培
トマト栽培に夢中になること5年目。
就農は3年目なのですが、その前に蘭越町による2年間のトマト栽培の研修期間がありました。その当初から、蘭越町の役場や関係機関の皆様から、農業経営相談会などで定期的にお世話になっているのですが、経営上の見通しが立つJA出荷メインの営農計画が斡旋されており、私が興味のあった有機栽培・自然栽培など、独自の販路が必要になる農業形態にはゴーサインが出ることはありませんでした。
ならばと、JA出荷の枠内で可能な、自然体なトマト栽培の探求に意識が向きました。
今回は、私が行っているトマトの誘引作業にまつわる自然体な栽培方法について、少し述べてみます。(すべてに例外ありです。)
・トマトの脇芽は、出方に法則がある
何棟もトマトを管理していると、花房ごとに脇芽の伸びる向きが右回り、左回りと変わるのに気づきました。トマト農家では長いひもで株の下方からクルクルと誘引し、真っ直ぐに仕立てるのが基本技術ですが、例えばすべてを右回りで誘引すると、繊維がブチッと切れる音がしたり、ひどいときには果房を落としてしまうことがありました。でも、脇芽の伸びる方向・法則に則って誘引してあげると、誘引が遅れて株が倒れてしまっても、傷みなく気持ちよく直すことができます。
(小さな脇芽。上から見ると右回りになっているのがわかる。)
・クリップの1個の誘引によるストレス減
誘引グッズの中に、大幅な作業時間短縮が可能なクリップがあり、就農後から取り入れています。通常はトマト1株につき2個使います。でも昨年、ツリークライミング(木の上の枝1箇所にロープを引っ掛けて行う木登り)を体験したある日、「まるでトマトの誘引みたい!」という発見があったので、誘引をクリップ1個で行ってみることにしてみました。
クリップは1個になることで経費が抑えられることはもちろんなのですが、ぶらんぶらんとトマトの脇芽が自由に動けるようになり、よりストレスがかからない気がしました。今年、1段目収穫間際で、トマトの株にフルに負荷がかかる今の時期に、この「クリップ1個誘引」の善し悪しがわかってきます。
(誘引作業を抜け出して体験したツリークライミングと、戻ってから実践し始めたクリップ1個誘引)
では、その結果・・・。
(1段目から4段目まで実がついていて、1株あたり15㎏ほどになっている果実の重さを1個のクリップで吊っている状態のトマトの株)
ほぼ倒れませんでした。今のところ有効です!
また、誘引するときに、隣同士絡まり合っている株を引き出してみると、グルンっと動き、ゆがみが直ってくれることが分かりました。爽快です。トマトの株にこの瞬間の気持ちを聞いてみたい。
(左、ゆがみを取る前。右、ゆがみが直った後。)
そんなトマトもようやく収穫スタートです。いろんな方の食卓にこのトマト達が届くことを想像すると、うれしいなぁと思います!
(地元の「ようてい農協」に出荷するYES!Clean認証トマト)
牧野萌(まきのもえ)
北海道 蘭越町
1983年宮城県生まれ。宮沢賢治に憧れ岩手県立大学で環境政策を学ぶ。震災後、野菜を作る勉強をしようと料理人の夫と1歳半の娘と仙台から移住。蘭越町で研修を受けた後、就農、「牧野農園」を開く。トマトを選んだのは、夫が得意なイタリア料理に使えるという理由も大きい。