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2016.12.14

人の温かさは町の温かさ

お客さんと漁師の奥さんのやりとり。
「おばちゃん、これなんの魚?」
「これは銀フグ、毒がないフグながよ。
 おとうちゃんが釣ってくるフグは肝がふっとい(大きい)きね~。」
「へ~、フグって肝も食べれるんですか」
「そうよ~、肝からうま味がでるがやき捨てたらいかんよ~。
今やったらよね、アラと一緒にお鍋にしてもえいし、残ったらから揚げにしてもえいきね~。」

(永遠続く^^)

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「えっ、何されてるんですか?」
「ま~見ていきや。このよね、カツオのシッポをよね、
 ぐつぐつ湯がいちょいて骨を取り出して爪楊枝をこしらえちゅ~が。」
「へ~、骨で楊枝を!」
「今、湯がきゆ~きこっちも見ていきや~」

(いろいろ連れまわされる^^)

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ここ中土佐町久礼の大正町市場は、他の観光地の市場に比べると規模はとてもとても小さく、
ほんの30秒も歩けば端にたどり着いてしまうほど。けれど、週末ともなれば
全国から人が集まり、前に進めないくらいの賑わいをみせる市場なのです。
どうして?

地方の集落が次々に衰退し活気が失われていく中、こんなに小さな漁師町が本当にどうして?
と移住当初は不思議でなりませんでした。

私たちがこの市場でお店を出し続けて分かってきたこと。
それはもちろん地元漁師さんが釣りあげる新鮮な魚を求めてというのは大きな理由でしょう。
でもそれだけじゃない、ここには人を惹きつける温かさと懐かしさ、
安心感と開放感、人の活気があるからだと気付きました。

今や高知県だけでなく日本全国の地方が町の活気を取り戻すべく、
あの手この手で新たに観光施設を作り、物産品を生み出し努力を続けています。
でも、ここ中土佐町久礼は、人そのものが財産なのだなと感じるのです。

欲しいものは大抵インターネットで簡単に手に入り、
大型スーパーに行けば一度に用事が済んでしまう便利なこの時代。

でも何だかもの足りない。味気ない。
モノを手にしたとき、おばちゃんとの会話が、町の様子が目に浮かぶ。
心と心のやりとりや、そのとき感じた喜びや刺激が思いだされる。
かつては当たり前だったことが今ではとても新鮮なこととなり、
人を惹きつけているのかなと思います。

私たちも週末はこの市場でお野菜を売ってきました。
人との心の繋がり、温かさ、楽しさ、単に野菜だけではない
何かを感じてもらえるような関係を築いていきたい、
そして自分自身もそれを楽しみとしていきたいと強く思う今日この頃です。

2016年の挑戦者のみなさん

challenger

北川美帆

北川美帆(きたかわみほ)
高知県 中土佐町

1976年 神奈川県生まれ。15年間、国際線のキャビンアテンダントとして勤務した後、「自然の中で感じる豊かさを自分の豊かさとして生きたい」という思いが生まれる。2年間の研修を経て、2015年、研修時代に知り合った夫とともに高知県で就農。農業のテーマは、子供たちと母親世代の食育。生命力に溢れるお米や野菜を食卓に届けること。また、畑や自然の中で行う様々な体験型イベントも展開していきたいと考えている。

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