SHARE THE LOVE

2019.11.16

自分の仕事について考える

「懐石って何?」という質問をされたら、それにたったひと言で答えるなら、僕は「季節を食べること」と言うでしょう。

京都の料亭、菊乃井さんの三代目亭主、村田吉弘さんが著書で書かれていたことです。
これを読んで、どれだけ考え抜いた結果としてこの答えを出されたのだろうと感動してしまいました。
自分は就農して以来ずっと「自分にとっての農業、有機農業って一体何なんだろう」とずっと答えが出ないままいたんですが、最近少しずつ整理がついてきたように思います。
やっぱり自分の軸は「自然が好き」ということに尽きるな、と。

先日夜に走っていてふと「雲がきれいだな」と思いました。
それについて少し掘り下げてみて、自分の捉えた「雲がきれい」は視覚的な雲そのものだけではなく、それを取り巻く環境、例えば雲の奥にある空の色や明るさや奥深さ、星や月からの照らされ具合やそれらの位置関係、風の強さや冷たさ、気温や匂い、全てひっくるめての「雲がきれい」なんだと気づきました。
多分こういう感覚的な部分は人それぞれ違うのだろうなと思います。

そしてこの感覚ってきっと今まで体験してきた、海で感じる潮の流れや満ち引き、ウネリのリズム、耳や鼻が痛いくらい寒い冬山の夜明けで見た、太陽が周りの物に色や暖かさを与えていく世界観、アフリカやニュージーランドで感じた多くのこと、畑で日々感じること、それらの積み重ねで得たものなんだろうと思うようになりました。

今まで過去の経験が遊んでばかりで、それを話すことを否定的に捉えていたんですが、間違いなく自分の軸になることなので、もっと肯定的に捉えようと思い始めました。
ただ経験も考えも中途半端なのでもっと自分の好きなことを深める。そして就農してから農業ばかりで世界が狭くなりすぎていたので、今まで自分が関心を持たなかった新しい世界を知る努力をしていこうと思っています。
もちろん自分のベースである畑はきちんとさせた上で。

今の自分の狭い世界だけで判断せず、もっと広い世界を知りながら、自分のやりたいことや自分の仕事について納得いく答えを見つけていきたいと思います。

kawasaki15-1

朝晩すっかり寒くなり、寒暖差で朝露がびっちりになりました。
冬の気配を感じる今日この頃です。

challenger

川崎亮太

川崎亮太(かわさき りょうた)
HATAKEYA
三重県 いなべ市

1986年埼玉県生まれ。青年海外協力隊でエチオピアなどで暮らした経験や、環境問題への関心から、有機農業を始める。神奈川県の「NO-RA〜農楽〜」千葉康伸さんの元で3年間学んだ後、2018年3月、妻と共に「HATAKEYA」を開く。徹底的に学び、「有機だから」という言い訳なく胸を張れる野菜を作ることが目標。

写真家の眼 川崎 亮太

過去の記事を読む

2019 挑戦者

BACK TO TOP